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Lighting (BMW) Archive

 前回の続きです。

 M3 Coupeに、HIDフォグランプ(withハイワッテージバラスト)を無理矢理付けてしまおうというこの企画ですが、

Light Switch

 これまでに、純正の「ライトスイッチユニット」に、DMM(Digital Multi-Meter)などを当てて解析してきた状況をまとめると、以下のようになります。
(「日高義樹のワシントン・リポート」風に)0xF8EB

  • M3 Coupe(E92)に、3 Series(E90系)用の「ライトスイッチユニット」を取り付けると、「フロントフォグランプ制御」以外の機能は、正常に動作する。
  • M3 Coupeにおいて、フロントフォグランプスイッチを押下しても、「足下モジュール」の所定の端子には、フロントフォグランプの電源電圧(信号名:55V)は出力されない。
  • 「ライトスイッチユニット」と「足下モジュール」との間は、車種別の専用ワイヤリングとなっており、M3 Coupeにおいては、フロントフォグランプの制御信号(信号名:S55V)は配線されていない。
  • M3 Coupeにおいて、「S55V」を強制的にアクティブにしても、「55V」には電源電圧は出力されない。
  • 「足下モジュール」は、M3 Coupe(E92)も3 Series(E90系)も、同じ部品番号のものが使われていることから、車種別にコンフィギュレーションを変えているものと思われる。

 よって、車体側の改造を必要最小限に抑えるためには、正規ディーラーにある「ダイアグシステム」(DISplusやGT1)を使って、車種別のコンフィギュレーションのうち、フロントフォグランプのビットを“1”にしてリビルドしてもらえば、済むことになります。

 しかしながら、いつもお世話になっている正規ディーラーさんとはいえ、さすがに本来の設定ではないコンフィギュレーションを行うことには抵抗があるでしょうし、第一、ワランティーの問題もあるため、設定変更をお願いすることは難しいと思われます。

 よって、今後予定しているM3 M-DCT用の「Active Shifter」の製作なども見越して、自力で解決することにします。

 題して、「M3 Coupe用フロントフォグランプ制御装置」と呼ぶことにします。
(「制御装置」とかいうほどの、たいそうなものではありませんが)0xF9C7

 制御装置のロジックは、以下のようになります。

  • 「スモールランプ」がONになっている時に、フロントフォグランプスイッチを押下すると、フロントフォグランプがONになる。
  • フロントフォグランプスイッチを押下する毎に、フロントフォグランプのON/OFFが切り替わる。

 「そんなの当たり前じゃんっ!!」と思えるほど簡単なロジックですが、これをインプリメントしようとすると、少し複雑なことになります。

 インプリメント上の注意点をまとめると、以下のようになります。

  • 「ライトスイッチユニット」等のロジック系は、+5V動作であるが、フロントフォグランプ等の電源系は、+12Vで動作させる必要がある。
  • 「フロントフォグランプスイッチ」は、タクトスイッチとなっており、スイッチを押下する毎にチャタリングが発生し、動作が不安定になることから、その対策が必要となる。
  • 車載用であることから、入力信号がオープンであったり、電源にノイズが混入しても誤動作することのないよう、フェイルセーフとしておく必要がある。

 なお、「スモールランプ」の換わりに、「イグニッション電源」を入力とすると、エンジンを回している時にフロントフォグランプを点灯することができ、「デイタイムランプ」としての機能も持たせることができます。

 以上の機能を、TTLなどの汎用ロジックICで実現しようとすると、かなりの部品点数となってしまいます。

 例えば、タクトスイッチのチャタリング対策には、CR回路とシュミットトリガが必要となり、タクトスイッチを押下する毎に出力をON/OFFさせるためには、フリップフロップが必要となります。

 ということで、今回初めて、PIC(Peripheral Interface Controller)を使うことにします。
(回路屋の諸先輩には、「こんな簡単なロジックなのに、なんでわざわざPICまで使うの?」と思われるかも知れませんが、M3 M-DCT用の「Active Shifter」の製作に向けての、練習台ということで)0xF9C7

Light Switch

 Microchip Technology社のPICには、現在最もよく使われているPIC16シリーズ/PIC18シリーズ(データ処理幅:8bit)を中心に、その上位のPIC24シリーズ(データ処理幅:16bit)、dsPICシリーズ(PIC24シリーズにDSPコアを搭載)や、その下位のPIC10シリーズ/PIC12シリーズ(データ処理幅:8bit)など、幅広い製品がラインナップされています。

 今回の制御装置は、非常に簡単なロジックであり、また基板サイズをできるだけ小さく抑えるため、ベースラインシリーズの中でも最も簡単な構成の、「PIC10F200」を使用することにします。

 またも、ずいぶん間が開いてしまいましたが、前回の続きです。

 HIDフォグランプの本体を加工します。

 このユニットは、ARISTOの時代に購入し、530i M-Sportにキャリーオーバーし、さらに今回、M3 Coupeにキャリーオーバーします。かれこれ、10年近く使っていることになります。

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

 HIDフォグランプ本体の色は、もともとは「シルバー」ですが、M3 Coupeのインテークに埋め込むことを考えて、「マットブラック」(つや消し黒)に塗装します。
(530i M-Sportの時も、同じような加工をしました)

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

 こんな感じで、しっかりマスキングしてから塗装します。

 自分で言うのもなんですが、“塗装ワザ”については、幼い頃から培ってきた経験で、かなり成熟の域に達してきたと思います。
(なんと言っても、M3 Coupeは、1/1のプラモデル(ダイキャストモデル?)ですから)0xF9F8

 塗装の直接的な技術も重要ですが、塗装する際の環境作りも重要だったりします。
(これについては、別の機会に詳しく)

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

 塗装が完了し、パーツを組み合わせた状態です。

 M3 Coupeのインテークに埋め込むのが、楽しみです。0xF9CF

 しばらく放ったらかしになっていた、この企画ですが、

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

 フォグランプの取付予定位置です。

 エアインテークの部分は避け、ラジエターグリルの左右に取り付けることにします。

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

 ということで、加工用のラジエターグリルです。

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

High-Wattage HID Fog for M3 Coupe

 前回の続きです。

HID Fog Lamp

 加工前と加工後との比較です。

HID Fog Lamp

 元の状態です。

HID Fog Lamp

 現在の状態です。

 HIDバラストの出力切換スイッチと、フロントフォグランプのスイッチとが、新設されました。

 またも、だいぶ間が空いてしまいましたが、前回の続きです。

HID Fog Lamp

 HIDバラストの出力を変更する、「切換スイッチ」です。LEDの透過照明になっています。

 この切換スイッチをコンソール周辺にそのまま付けると、「いかにも後から付けました」という“後付け感”バリバリなので、頭と手を使って、少し工夫してみることにします。

HID Fog Lamp

 M3 Coupeのオリジナルの状態では、純正のスイッチユニット(正式名称:「ライトコントロールエレメント」)の青○の位置は、スイッチカバーで塞がれています。
(M3 Coupeでは、メーター等のイルミネーションの照度調節は、iDriveから電子的に行うため、3 Series用にはあったボリュームが、省略されています)

 このスイッチカバーの部分に、切換スイッチを埋め込むことにします。

HID Fog Lamp

 切換スイッチの中身です。3つの状態があり、45W出力の時、赤く点灯、25W出力の時、黄色く点灯します。
(中立状態(35W出力)の時は、LEDは消灯)

 切換スイッチから延びているケーブルは、太くて扱いにくいため、単芯のコードに付け替えておきます。
(いつも使っているコードは、自動車用の、耐熱性のあるものを使っています)

HID Fog Lamp

 純正スイッチユニットのスイッチカバーをフライス盤に固定し、エンドミルで切削します。

 手作業(ヤスリ等による手加工)では、完璧な直線を出したり、四隅に均等にアールを出したりするのは困難です。このフライスマシンは、非常に重宝します。

HID Fog Lamp

 加工の終わったスイッチカバーです(画像左側)。

 純正スイッチユニットも、切換スイッチの中身の基板が載るよう、フレームを切削加工してから、基板を固定します(画像右側)。

HID Fog Lamp

 スイッチカバーを取り付けた状態です。

 M4のエンドミルを使ったので、四隅にはR2が付いています。

HID Fog Lamp

 シーソー部分を取り付け、純正スイッチユニットを、元に戻した状態です。

 シーソー部分とスイッチカバーとの間隔は、0.3mm程度です。

 いや~、我ながら、コワいくらい上手くできました。まるで、最初から組み込まれていたかのような、カンペキな完成度です。(と、自画自賛)0xF9F8