SOARISTO工房 Logo
Research and Development Archive

 久しぶりのこのシリーズ

 iPhoneの発売を、明後日(7月11日)に控え、水を差すわけではありませんが、面白い記事が。

iPhoneに賭けるソフトバンク、 懸案のデータ通信を伸ばせるか?
(2008年7月4日:ダイヤモンド・オンライン)

 ソフトバンクの「期待の星」iPhone(アイフォーン)の発売が7月11日に迫ってきた。「13ヵ月連続純増ナンバーワン」という表向きの華々しいイメージと異なり、同グループは連結ベースで3兆7101億円の負債(長短借入金の合計は2兆352億円)の塊だ。しかも、同業他社より2000円近くも安いARPU(ユーザー1人当たり1ヵ月の平均通信料収入)に苦しむ低収益力会社と言わざるを得ない。

(中略)

 このうち、日本向けについて、当初、業界ナンバーワンのNTTドコモがアップルとの契約交渉を有利に進めていたとされる。ところが、孫社長は、旧知のステーブ・ジョブスCEO(最高経営責任者)との極秘トップ会談を繰り返した。そして、大方の予想を覆し、日本向けのiPhoneの販売権を獲得して、ビジネス界をアッと驚かせたのだ。

 その急転直下ぶりは、発表にもよくあらわれている。まず、6月4日。ソフトバンクモバイルは、年内にiPhoneを販売すると発表した。ところが、同社自身も、相当慌てて発表したフシがある。というのは、発表内容が「今年中に日本国内においてiPhoneを販売することにつきまして、アップル社と契約を締結しました」(原文)ということしかなく、「いつから」「どういう料金プランをとるか」といった肝心の点についてなにひとつ言及していなかったからだ。

 当時、マスコミ関係者が、担当者たちを取材しても、「我々は何も聞かされていない。すべては孫社長が一人で交渉して決めている」という回答しか得られない有り様だった。

iPhone販売を急ぐ裏にARPUの低さへの焦りが

 携帯電話機は、販売に際して、技術基準を満たしていることを示す総務省の「認定」が必要だ。そこで、筆者がこうした手続きの状況を問い質しても、ソフトバンクの回答は「ノーコメント」(広報部)と繰り返すだけというお粗末な状況だった。

 ところが、その一方で、孫社長は鼻高々で、別の記者会見の席で「(販売する電話機が)潤沢にというわけにはいかない。早い者勝ちという状況になるかもしれない」などと発言。安易に人気を煽っているとしか思えない対応を繰り返した。

 これに対して、総務省は「本当に必要な準備が整っているのか」「孫社長の最近の言動には、ADSLやナンバーポータビリティの開始時に混乱を引き起こした反省が見られない」(幹部)と苛立ちを隠さなかった。携帯電話サービスは、稀少な周波数を占有する事業許可制のインフラビジネスである。当然、それなりの責任・品格が求められることから、総務省の苛立ちは当然と言えるものだった。

 これまで自ら引き起こした数々の騒動からは、まったく学習していないということです。0xF9D1

(前述の記事の続き)
 だが、ソフトバンクはなぜ、まるで焦っているとしか思えないほど、iPhoneの販売を急ぐのだろうか。

 実は、電気通信の分野で以前から最も重要な経営指標のひとつとされてきたARPUにその謎を解く鍵が潜んでいる。リードで触れたが、ARPUは、ユーザー1人当たりの月額通信料収入のことを言う。業界全体の競争の激化に伴う実質的な値下げもあって、このARPUは過去数年にわたってじりじりと低下する傾向がみられるのだが、ソフトバンクの問題は、このARPUがライバル達に比べて極端に低いことにある。

 例えば、2008年3月期第4四半期(2008年1~3月)のARPUを比較すると、NTTドコモは6050円(うち音声ARPUが3780円、データARPUが2270円)、KDDIのauは5990円(うち音声ARPUが3820円、データARPUが2170円)とそろって約6000円の水準を維持しているのに対して、ソフトバンクのそれは4310円(音声ARPUが2710円、データARPUが1600円)と大きくライバル2社を下回っている。

 しかも、過去1年間の総合ARPUの減少額をみても、ドコモが480円、KDDIのauが390円なのに対し、ソフトバンクは900円とその大きさが目立つ。

 ARPUとは、Average Revenue Per Userの略で、契約者1人あたりの1ヶ月の平均収入のことで、そのキャリアが、どの程度優良な顧客を掴んでいるかを示す数値の一つです。

 実際に、某社のARPUの推移を、第28回定時株主総会資料(2008年6月25日開催)にて確認してみましょう。


〈ARPUの推移および~〉 (資料5ページ)

 当期の総合ARPUは第1四半期から5,000円、第2四半期が4,800円、第3四半期が4,520円、第4四半期が4,310円となりました。この総合ARPUの下落は、月額基本使用料980円(税込み)の「ホワイトプラン」の申込件数が順調に増加していることや、「新スーパーボーナス」加入者向けの特別割引の影響によるものです。


 さらっと書いてありますが、加入者を集めたいがため、各種割引サービスを連発したお陰で、わずか1年も経たずして、加入者あたりの単金が14%近くも下落しています。

 ドコモの同期(2007年度第4四半期)のARPUは6,050円であるのに対し、某社のARPUは4,310円で、30%近くも低い数値です。逆算すると、ドコモと同じ売上げを得るためには、1.4倍の加入者を集めなければなりません。

 「13ヵ月連続純増ナンバーワンッ!!」などと、ひとり喜んでいますが、見る人が見れば、いかにそれが薄っぺらいものであるか、よく分かります。0xF9D1

 また、一部マスコミでは、「ドコモの一人負け」と揶揄されていますが、顧客特性からすると、ARPUの高い、いわゆる「プライム」の加入者が流失したというよりは、価格に敏感な(=「高額な料金を支払えない」、「安けりゃいい」という)「サブプライム」の加入者が乗り移った、と捉えた方が正しいでしょう。
(加入者変動の「数」ばかりに目がいって、「質」とか「価値」を考えることすらしない、相変わらずここでもマスコミの○ホさ加減を露呈させています)

(前述の記事の続き)
純増ナンバーワン戦略で財務体質が弱体化

 こうした数字が意味することは、ソフトバンクの顧客層は、ドコモやKDDIのauと比べて携帯にお金を使わない携帯ユーザーが中心ということだ。つまり、携帯電話会社にとっては、経営効率の悪いユーザーということになる。というのは、不通地帯を減らすための設備投資資金などをなかなか稼がせてくれない側面を持つからである。

 そして、ソフトバンクのARPUはボーダフォン時代から低かったが、このところの顧客数の「純増ナンバーワン」を支えるための「ホワイトプラン」「ただとも」などの実質値引きが響き、ソフトバンクの財務体質はむしろ弱体化しているのが実態なのである。

 実は、携帯電話業界では、ソフトバンクがこうした状況に陥る可能性が早くから指摘されていた。というのは、ソフトバンクに限らず、契約件数が伸びない苦境を打開するため、何らかの値引き策を打ち出し、ユーザー数を伸ばしてもARPUが低下し、全体としての財務体質が悪化した例は過去にもあるからだ。有名なケースとしては、auが合併当初に打ち出した「ガク割」がその典型とされる。このため、ライバル会社のある社長は早くから「ソフトバンクはARPU地獄に陥るのではないか」と周囲に洩らしていたという。

 “ある会社の社長”・・・。(笑)

 で、事態はもっと深刻で、「ARPU地獄」の前に、巨額の「借金地獄」が待っています。

 こちらも、定時株主総会資料にて確認してみましょう。


(7) 主要な借入先の状況 (資料16ページ)

   みずほ信託銀行 1兆4,983億円
   シティバンク銀行 1,066億円
   三井住友銀行 966億円
   みずほコーポレート銀行 907億円
   Vodafone Overseas Finance Limited 845億円
   ドイツ銀行東京支店 582億円
   上田八木短資 300億円
   あおぞら銀行 206億円
   東京短資 100億円


 かわいく、個別の借入額は記載されているのに、総額は明記されていないので、気を利かせて計算してあげましょう。0xF9D1

 総額は、(チャリ~ン)1兆9,955億円となります。2兆円ですよ、2兆円っ!!
(「貸借対照表(連結ベース)」(27ページ)において、長期借入金と短期借入金(返済期間1年未満の借金)とを合計すると、2兆352億円となります)

 ちなみに、売上高は、連結ベースで2兆7,761億円(携帯事業で1兆6,308億円)、営業利益が、連結ベースで3,242億円(携帯事業で1,745億円)です。

 借金が2兆円ともなると、支払うべき利子だけでも相当な額になる訳で、普通の神経なら、“気持ち悪くて食事も喉を通らない”ぐらい(のはず)です。

 実際、今期に支払った利息は、なんと1,148億円にも上り(資料28ページ)、携帯事業の営業利益の3分の2を食い潰してしまっています。しかも、これは今期の支払利息であって、今期、さらに借入を増やしているので、来期以降、支払利息はまたさらに増えます。
(っていうか、なんかこっちが気持ち悪くなってきた・・・)0xF9C7

 しかして、その借金の原資とは、某氏お得意のいつもの作戦、有形無形問わず、「何でもかんでも証券化」で、借金の形に充ててます。
(資料10ページ他)

 アメリカでは、Sprint Nextelを始め、キャリア各社が最終損益で赤字に転落する中で、iPhoneが使えるAT&Tだけが、第1四半期の純利益を20%以上も伸ばしたところを見せられると、そりゃ~、もう、スティーブ・ジョブスに土下座してでも手に入れなければならないですね。
(外国人に、土下座作戦が効くかどうかは分かりませんが・・・)0xF9C7

 で、問題のiPhoneですが・・・、

 売れるでしょう、最初のうちは。新しいモノ好きの「イノベーター」や「アーリーアダプター」達が欲しがっているうちは、かなりの調子で売れると思います。
(また例によって、「即日完売っ!!」とか、「予約3ヶ月待ちっ!!」とか、派手な煽り宣伝をすると思いますが)0xF9D1

 ただ、その「流行り」が去った後、他キャリアに抜きん出て高めの設定(かつ強制加入)の「パケット定額フル」(月額:5,985円)が、これら新しいモノ好きのユーザにどう受け入れられるかは、未知数です。

 また、これらのユーザは、四六時中、使いまくります。結果、ネットワークに相当の負荷が掛かります。興きては消えていった過去のキャリアから受け継いだ、某社の継ぎ接ぎだらけの弱っちい通信インフラが、その過大なトラヒックに耐えられるかどうか、疑問です。

 あわせて、これらのユーザは、blogやらなんやらで、やたら情報発信しまくるので、「ネットワークが遅い」、「繋がらない」とかいうクレームが、ネット上で1が10になって伝わり、ひとつ間違えると、巨大なマイナスの宣伝効果が生まれます。

(前述の記事の続き)
データ通信が増えれば基地局がパンクする危険も

 ただ、ソフトバンクの青写真通り、弱点の強化が進むとは考えられない、と厳しい視点を注ぐ関係者も少なくない。

 見方が交錯するのが、iPhoneの料金設定だ。実は、ソフトバンクは、音声電話として人気のホワイトプランでiPhoneを提供するものの、同時に、「Webフルブラウジングはもちろん、動画サービスや地図サービス等を、通信料金を気にすることなく利用できる新サービス」という「パケット定額フル」(月額5985円)の加入も義務付けるというのだ。

 この「パケット定額フル」(月額5985円)は、NTTドコモの「パケ放題」(月額4095円)やKDDIのauの「ダブル定額」(月額4410円)に比べて割高感がある。この点について、「一気にデータARPUの向上を狙う戦略が鮮明になった」(関係者)という好意的な見方がある半面で、「ソフトバンクの基地局投資は不十分。加入者が増えると通信障害を起こしかねないため、割高料金を設定して加入者が増えすぎないようにコントロールしようとする意図が透けている」(前述の総務省幹部)と冷ややかな見方も少なくないのが実情だ。この見方は、皮肉なことに、従来の安売り戦略のツケである低ARPUが響き、今後もARPUの向上が難しいというジレンマに陥っているというものだ。

 そうした中で、一昨年秋に業界に先駆けて端末の割賦販売モデルを導入し、その初期の利用者たちが端末代金を支払い終える今秋以降、ドコモとKDDIは、ソフトバンクユーザーの切り崩しを本格化するとの観測が存在することも見逃せない。

 「携帯・三国史」と呼ばれるビジネス競争の中で、iPhoneはソフトバンクの救世主になり得るのか。いよいよ注目の商戦が、待ったなしでスタートすることになる。

 ということで、iPhoneが乱戦時代のホワイトプラン、もとい、ホワイトナイトと成り得るかどうか、「お手並み拝見」ということで。0xF9D1

〔関連情報〕
   ・【特集】「数値の裏を読む」
   ・数値の裏を読む ~流出でも純増のカラクリ~
   ・数値の裏を読む ~ウヴェルテュールの終わり~
   ・社長が謝罪会見 総務省、事情聴取へ
   ・【速報】公正取引委員会も事情聴取へ
   ・各社の社説から
   ・本当に友達ですか?

 このCFをご覧になった方も多いはず。

   ttp://www.youtube.com/watch?v=svNq8BXS9is
   (頭にhを付けてコピペしてください)

部活帰りの女の子たち4人:「ごきげんよう!」「ごきげんよ~!」

女の子A: 「じゃあ、試合の件は電話して、9時までに」
女の子B: 「うん、携帯掛けるね、9時までに」
女の子C: 「キミちゃんにも電話するね」
キミちゃん: 「あぁいいよ、私に掛けるとお金かかるし」
女の子B: 「あ、そっか。ソ○トバンクじゃないんだ・・・」
キミちゃん: 「ごめん・・・」
女の子B: 「いいよ、キミちゃんが悪いんじゃないんだし」
女の子C: 「いいよ!」
女の子A: 「そうだよ!」
女の子C: 「気にしないで~」
キミちゃん: 「・・・」

テロップ: 「友達は大切に。」

 久々に固まってしまいました。

 きょうび、「ご機嫌よう」などという、お上品な言葉を使う女の子が残存していたのかっ!0xF9CF、ということではないです。

 あるいは、「キミちゃん」が、若いころの中谷美紀さんっぽくって、ポニーテールが可愛いなぁ!0xF9CB、ということでもないです。

 先日、例の「0円」広告で、公正取引委員会から「警告」をくらっておきながら(とばっちりで、他の2社は「注意」)、厚顔にも、こういうご時世に、「仲間外れ」や「いじめ」を連想させるようなCFを出せる無神経さ。

 CFを作ったヒトも“すごい”と思いますが、これを「出せる」と判断したヒトも“すごい”と思います。

 もう、正常な判断能力が麻痺しちゃってるんでしょうねぇ。0xF9D1

 ってことで、さっそく公○広告機構さんが、意見広告のCFを出されています。

   ttp://www.youtube.com/watch?v=xaXpKQVKAHc
   (頭にhを付けてコピペしてください)

 というのはもちろん冗談で、どこかネット上の、ユーモアとアイロニーに溢れた方が作られた作品のようです。よくできてます。

 ってことで、

部活帰りの女の子たち4人:「ごきげんよう!」「ごきげんよ~!」

女の子A: 「じゃあ、試合の件は電話して、9時までに」
女の子B: 「うん、分かった~」
女の子C: 「うん!」
女の子A: 「キミちゃんにも電話するね」
キミちゃん: 「あぁいいよ、私に掛けるとお金かかるし」
女の子A: 「あ、そっか。ソ○トバンクじゃないんだ・・・」
女の子B: 「え?私もソ○トバンクじゃないけど」
女の子A: 「えっ?」
女の子C: 「私もソ○トバンクじゃないけど!」
女の子A: 「えっ~~~?」

テロップ: 「ケータイ会社は選ぼう。」

 現実の世界では、○○○○○○の方こそ仲間外れだったりする訳で。0xF9D1

〔参 考〕
 ・携帯電話事業者別契約数
 (電気通信事業者協会:平成18年11月末現在)

      NTTドコモ: 52,126,200加入(55.2%)
      KDDI:    26,928,000加入(28.5%)(ツーカー含む) ※上位2社で83.7%
      ソフトバンク: 15,399,500加入(16.3%)

 ライフワークとして脈々と続くこのシリーズ。0xF9F8

 こんな本が出てます。
(日経BP社:1,890円)

jokyoku01.jpg

 浮沈激しいこの業界、名の挙げられていた企業の中には、すでにこの世に存在しない(あるいは事業撤退した)ものも多く・・・。
(イッパツ屋と呼んでますが)

うだつのあがらねぇ平民出に、やっと巡ってきた幸運か、
それとも破滅の罠か・・・。

by クロトワ

 始まりの終わりか、終わりの始まりか・・・。

jokyoku02.jpg

 こんな特集もあります。

 さて、一連のゴタゴタで、通話料金(ではなく、正しくは端末料金の割賦の頭金)が「ゼロ円」になっただけでなく、信頼もすっかり「ゼロ」になってしまった某社ですが、

 2006年10月末時点の携帯電話契約数が発表されました。

10月の携帯電話契約数、auが35万2600件増、ソフトバンクは2万3800件増
(2006年11月8日:ITpro Network)

 TCA(電気通信事業者協会)が公開した10月末時点の携帯電話契約数に依ると、

   ドコモ: 5214万3700 (4万800の純増)
   KDDI: 2660万3100 (20万600の純増)
   ソフトバンク: 1533万800 (2万3800の純増)

となりました。(括弧内は、9月末時点からの増減)

MNP第1ラウンドはKDDIの一人勝ち,NTTドコモが純増数を大きく減らす
(2006年11月8日:ITpro Network)

 また、MNP(番号ポータビリティ)による加入者流動は、

   ドコモ: 約7万の純減
   KDDI: 10万2000の純増
   ソフトバンク: 2万3900の純増 (転入3万1100、転出5万5000)

となりました。(いずれも、各社の公表値)

 結果だけ見ると、ドコモがMNPによる流出により単月の純増数を大きく減らしたのに対し、KDDIが大きく躍進したことになります。
(逆に、ドコモはMNPで約7万も純減しているのに、加入者トータルで約4.8万の純増としたところは、ある意味すごいことですが)

 一方、ソフトバンクは、MNP開始前の下馬評では“一人負けになる”とされていましたが、約2.4万の純増ということで、“予想外”に健闘していることになります。

 一般ピープルの理解は、もちろん、ここまでで良いと思います。

 んが、果たして本当にそうなのでしょうか?

 「2万3800の純増」の根拠を整理してみると、

   MNPによる増減: 転入3万1100、転出5万5000 (差し引き2万3900の減)
   MNP以外の増減: 新規契約19万2100、解約14万4400 (差し引き4万7700の増)

であり、MNPによる2万3900の減と、MNP以外による(純然たる営業活動による)4万7700の増で、差し引き2万3800の純増と言っています。

 さてここで、前述のTCAの公開値を、もう少し詳しく見てみましょう。

 携帯電話の全契約数のうち、「携帯IP接続サービス」の契約数は、つぎのとおり。

   ドコモ: 4719万9900 (1万3400の純増)
   KDDI: 2174万2900 (23万4400の純増)
   ソフトバンク: 1288万4700 (1万8000の純減

 各社とも、プラスの数値がキラキラ輝いて(輝かせて)いる中で、一ヵ所だけ、何故だかマイナスになっているところがあります。

 この「携帯IP接続サービス」とは、ドコモでいえば「iモード」、KDDIでいえば「EZweb」などの、ネット接続ができるサービスのことを指しています。

 先ほど、MNPを除く純然たる営業活動では、「4万7700の純増」になっていましたが、携帯IP接続サービスでは、「1万8000の純減」。

 はて? きょうび、ネット接続のできない端末など、買うヒトがいるのでしょうか?

 その答は、「プリペイド式携帯電話」の加入数にあります。

 TCAの公開値では、「ソフトバンクは数値を公表しておりません。」とされていますが、実は値が公開されています。

   ドコモ:  4万6500
   KDDI:  105万3700 (auとツーカーの合計値) 
   ソフトバンク: 156万5700

 まず驚くべきは、その絶対数の違いです。

 「プリペイド式携帯電話」は、ご存知のとおり、児童買春や荒手の詐欺商法、外国人犯罪の温床とされ、堅気の商売をしているドコモは、一連の社会的問題が顕在化した時点で、契約時の身元確認を厳格化するなどして、販売を減速させました。

 一方、他の2社は、いずれも100万契約オーバーと、ドコモと比べて2ケタ以上も異なる契約数を、いまだに保持しているのです。

 しかし、こんなことで驚いていてはいけません。

 プリペイド式携帯電話サービスには、「有効期限」があり、その有効期限を過ぎると、当然ながら使用できなくなります。あわせて、契約者数のカウントからは、自動的に外されます。

 んが、ソフトバンクは、プリペイド式携帯電話サービスの有効期限を、これまで「180日」であったところを、倍の「360日」に延長しているのです。しかも9月1日から。

ボーダフォンがプリペイド通話料値上げ,番号有効期限は2倍に延長
(2006年7月28日:ITpro Network)

 名称はボーダフォンとなっていますが、時期的には、すでにソフトバンクによる買収が完了し、着々と今回の「予想外割」の構想を練り、“堅牢なシステム”の構築を進めていたころだと思われます。

 この9月1日というタイミングが、9月末の中間決算を睨んだものなのか、はたまた10月24日のMNP開始を睨んだものなのか、定かではありません。

 定かではありませんが、いずれにしても、これまでの約款の180日規定で、使っても使わなくても10月末に自動解約になるはずだった契約が、360日規定に変更したことにより、何もしなくても、労せずして、来年春まで延長(延命)されたことになります。

 すなわち、今回の「流出でも純増」の裏には、少なからず、プリペイド式携帯電話の自動解約先延ばしによる“オフセット”が掛かっているはずなのです。

 おそるべし、ソフトバンク。(そこまでするかっ!)

 この「延命策」を考えついたヒトは、まさに天才です。ここまで悪魔的な、狡猾な数値操作術を思いつくヒトは、ドコモにはいないでしょう。(ある意味、真面目なので)

 しかも、思いつくだけではなく、適切な時期に、前もって実行しているのです。

 気になるのは、その“オフセットの数”です。プリペイド式携帯電話の契約数が「156万5700」ですから、仮にその1%が非有効契約だったとしても、優に「純増2万3800」の意味すら大きく揺るがす数値になるはずです。

(以下、しつこく編集中)

 まったく、この手の愉快な話題には、事欠かない。
(いつも楽しませていただきまして、ありがとうございます)0xF9D1

 各社の社説を紹介する前に、この話題。

ソフトバンク、システム障害「ドコモとauのせい」
(2006年10月30日:ZAKZAK)

 携帯電話会社を変えても番号がそのまま使えるモバイルナンバーポータビリティー(MNP)で、「予想外割」を打ち出したソフトバンクモバイル(SBM)。まさに予想外のトラブルの最中、都内の一部SBM販売店では、トラブルを「NTTドコモとKDDI(au)のシステム障害によるもの」と説明していたことが30日、明らかになった。システムトラブルで他社への乗り換え業務を止めただけでなく、責任まで転嫁する事態に、SBMの企業姿勢が問われそうだ

【虚偽説明】

 「お客様各位 NTTドコモとKDDI(au)においてシステム障害が発生しております」

 「その影響により、ナンバーポータビリティー(番号継続制)を利用したソフトバンクへの新規ご契約が不可能となっております」

 都内・新宿のSBM販売店で29日夕、こんな張り紙が出された。

 SBM広報部は「販売店単位の情報は現時点で把握していないが、情報の行き違いで混乱している状態だった。トラブルは当社のシステムが原因であり、間違った説明があったとすれば、申し訳ない」としている。

 (中略)

【利用者にツケ】

 一連のトラブルの背景には、孫正義社長が新料金プランを「社内のごく一部にしか知らせていなかった」ため、社内はおろか、販売店への周知が不十分だったことがあげられる。

 また、システムがパンクした28、29日にも「0円」を強調したテレビCMは流され続けた。SBM広報部は「29日中にシステムを復旧するつもりでいたので、CM中止の判断には至らなかった」と説明するが、「直前発表で話題性を優先させたツケが、利用者や販売店などに回った格好」(アナリスト)と指摘する声もある。

 ソフトバンクグループでは過去にも、「ヤフーBB」の格安料金などで利用者を大量に集めた結果、回線開通という肝心の作業が間に合わず、大幅に遅れる失態を演じている。今回の一件は過去の教訓がまったく生かされていないことになり、その“確信犯”的な業務態勢に、通信業者としての資質も問われそう

 携帯電話業界に詳しいジャーナリストの石川温氏は「SBMでは孫社長の一存で物事が決まり、反対できる人がいないといわれている。携帯電話のプロもおらず、このままなら、本分の通信分野でも今後こうした“事故”が頻発する可能性がある」と指摘している。 

(下線部は、筆者追記)

 もはや、コメントの価値なし。

(そもそも、某社は「電気通信事業者」だったんでしょうかね)0xF9D1

 さて、本題に戻ります。まずは日経から。

【社説】番号継続制の信頼損ねたソフトバンク
(2006年10月31日:日本経済新聞)

 24日から始まった携帯電話の番号継続制度で、受付システムの故障から変更手続きができなくなるというトラブルが起きた。原因となったソフトバンクは「申し込み多数のため」と説明しているが、実際には制度開始直前に大幅な料金割引プランを発表するなど、準備不足が否めない。新制度は携帯電話市場に競争を持ち込むと期待されているだけにその信頼を損ねた責任は大きい

 番号継続制度は携帯電話番号を変えずに通信会社を変更できるという仕組みで、総務省が2年前に導入を決めた。欧米やアジア諸国ではすでに採用が進んでおり、日本の携帯電話料金が相対的に高いのは、番号が障害となって顧客が固定化されているからだという批判に応えた。

 通信会社を変更するには現在の契約を終了し、別の会社と新たに契約を結ぶ必要がある。ソフトバンクがトラブルを起こしたのはその変更を受け付けるシステムだ。新規の加入申し込みだけでなく、他の通信会社に移りたいという申し込みも受けられなくなったため、NTTドコモやKDDI(au)も一時、変更手続きを中断する必要に迫られた。

 今回のトラブルは起こるべくして起きたようにもみえる。ソフトバンクは自社の加入者同士なら通話もメールも定額というプランを設けたが、発表したのは前日のことで、各営業所にも事前に知らせていなかった。しかも割引内容を途中で変更するなど、システムだけでなく、対応窓口にも相当な負担をかけた。

 新プランの発表は利用者にも戸惑いを呼んだ。大幅割引を受けるには一定時期までに申し込む必要があるとしたため、顧客が殺到した。通話料も自社内なら定額だが、他の通信会社へかけるとむしろ高くなる場合があり、端末も割賦販売で購入する必要があるなど制約条件が多い。

 ソフトバンクは2001年秋にADSL(非対称デジタル加入者線)サービスを始めた際にも市場で混乱を招いた。ボーダフォンの日本法人を買収して携帯電話事業に参入した孫正義社長は「大人になったソフトバンク」を強調していたが、反省は生かされなかったといえる。

 番号継続制度に便乗したソフトバンクの攻勢に対し、NTTドコモとKDDIは特に料金の引き下げはせず、共同歩調をとっている。携帯電話業界の寡占体質を崩すにはソフトバンクの参入は好ましいことだが、通信という社会インフラ事業には信頼感と安定感は欠かせない。ソフトバンクには本当の意味で消費者の利益となるサービスを期待したい。

(下線部は、筆者追記)

 「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と言います。

(これじゃ、愚者以下ですな)0xF9D1

 つづいて、読売新聞。

【社説】[ソフトバンク]「社内も混乱させた『極秘作戦』」
(2006年10月31日:読売新聞)

 携帯電話の料金を価格破壊しようとした志は買えるが、社内体制がお粗末だった

 携帯電話会社を変えても、番号をそのまま引き継げる「番号持ち運び制度」が、開始早々、トラブルに見舞われている。

 業界3位のソフトバンクモバイルの事務処理システムが、多数の申し込みに対応できず、契約切り替え業務の停止に追い込まれた。

 窓口まで出向いたのに切り替えができず、週末の貴重な時間を無駄にした消費者も少なくない。ソフトバンクはシステムの拡充を急ぎ、顧客に迷惑をかけない社内体制を構築する必要がある。

 混乱のきっかけは、ソフトバンクが制度開始の前日に、「基本料が要るだけで自社間の通話とメールは通話料がゼロ」という「通話定額制」など、複数の新料金制度を発表したことだ。

 劇的な発表で宣伝効果を高めるため、この作戦は極秘とされた。代理店はおろかシステム担当など社内の大半も、計画を知らされていなかったという。

 百貨店やスーパーは特売をする時に販売員を増強する。「画期的な低価格」と銘打って、新料金制度を導入する以上、ソフトバンクも計画の概要を、事前に担当者に伝え、それに応じた準備をさせておくべきだった。

 ソフトバンク・グループは、ADSL(非対称デジタル加入者線)でも似たようなトラブルを起こしている。格安料金と接続用機器の無料配布で契約を集めたが、回線を通す体制が追いつかなかった。一部では開通まで数か月かかり、契約者の苦情が総務省などに相次いだ。

 とはいえ、ソフトバンクの格安料金がADSLの普及を加速し、日本を世界でも指折りの高速大容量(ブロードバンド)通信大国に導いたのは確かだ。

 日本の携帯料金は、欧米諸国より割高とされる。番号持ち運び制度は、業界に新たな刺激を与え、料金引き下げを含むサービス向上への競争を巻き起こすことを狙っている。

 ソフトバンクの「通話定額制」は、その目的に沿った新サービスと言える。

 NTTドコモとKDDIは、実際に払う料金が「定額制」で安くなるのは、ごく限られたケースで、大半の利用者には自社の方が安い、と主張している。

 それが事実だと確信するなら、比較広告などで堂々と訴えればいい。

 もし自社の料金が見劣りし、顧客が流出すると判断するなら、基本料と通話料で対抗策を打ち出すべきだろう。両社の料金割引制度は、多くの利用者が「分かりにくい」と感じていることだ。

(下線部は、筆者追記)

 「敵を欺くには、まず味方から」ですか。

(ちと行き過ぎたようで)0xF9D1

 さて、いよいよ朝日新聞。

【社説】携帯トラブル しっかりせよ、孫さん
(2006年10月31日:朝日新聞)

 鳴り物入りで始まった携帯電話の番号ポータビリティー(持ち運び)制度が、とんだ混乱に揺さぶられている。

 震源地は業界3位のソフトバンクモバイルだ。同社の携帯同士ならば通話料やメール代を原則として「0円」とすることを打ち出した矢先に、電話会社を変える申し込みが予想以上に増えて、契約変更を処理できなくなったのだ。

 番号持ち運び制度は、すでに携帯を使っている人が電話番号を変えずに電話会社を乗り換えることができるものだ。携帯業界に新たな競争を持ち込むのが狙いで、特に期待されていたのが通話料などの値下げだった。

 ソフトバンクはライバルのNTTドコモやKDDIに先駆けて、通話料やメール代で価格競争を仕掛けた。この点は評価したい。

 しかし、その直後に起きた混乱は、社会のインフラを担う電話会社としては、あまりにもお粗末だ。ソフトバンクはADSL(非対称デジタル加入者線)の「ヤフーBB」を売り込んだ時も、工事が遅れた。新しい分野に挑戦するたびにトラブルを起こすようでは、信頼を失ってしまうだろう。

 ソフトバンクはボーダフォンなどを買収して、売上高が2兆円を超えようかという大手通信会社となった。かつての知名度の低い駆け出し企業とは違うのだ。その自覚を持ってもらいたい。

 今回のトラブルに対する孫正義社長の態度にも納得できない

 記者会見で、契約変更の処理能力が足りなかったことを認めたが、それ以上の説明を拒んだ。そもそも処理能力がどれだけあったのか。新たに契約を結んだ人と契約を解除した人はそれぞれ何人なのか。そうした肝心のことが明らかにされなかった。不利な情報だからといって公表を避けるようでは困る。

 今回の問題では、携帯電話の料金体系が複雑すぎるという実態も浮き彫りになった。トラブルの引き金になった料金「0円」は本当に得なのかどうか。無料になるには細かな条件がいくつもついている。複雑さを表に出さずに衝撃的な数字だけで利用者を引きつけようとしているなら、見すごせない。

 公正取引委員会は広告の表示が適切かどうかについて調査を始めた。ソフトバンクは公取委の判断を待つまでもなく、新しい料金体系の全体像がきちんと伝わるようにすべきだ。

 業界全体を見ても、携帯の料金体系は複雑になるばかりだ。NTTドコモとKDDIもご多分に漏れない。

 大手3社は今回のトラブルを料金体系を分かりやすくするきっかけにしてほしい。例えば、一般的な利用者の実際の負担額を比べるような方法で料金が高いか低いかを示す。そうした工夫を急いだ方がいい。

 まず料金を見えやすくする。それが価格競争の地ならしになる。

(下線部は、筆者追記)

 まるで某社を叱咤激励し、エールを送るようなサブジェクト。他の主要紙とは、ちと書きっぷりのニュアンスが異なる。

 某社に閉じた失態を責めるべきを、なぜか競合他社全体の問題にまで拡大させている。

 さすがは、現「広報室長」が、元「論説解説委員」であらせられたことだけはある。
(元上役のいる会社に、批判的記事は書けないか・・・)0xF9D1
   ttp://www.softbank.co.jp/lecture/outline/08.html