前回の続きです。
前回は、RAIDアレイを構成するための「スタックボックス」を、アクリル板を組み合わせて作製しました。
こちらは、今回使用する、3.5インチのハードディスクドライブ、Western Digitalの「HUS728T8TALE6L4」(8TB、SATA 6Gbps、7,200rpm)です。
同じ製造年月日のものを、6本用意しました。
こちらは、HDDとRAIDコントローラー(LSIの「MegaRAID SAS 9362-8i」)を接続するための、「ファンアウトケーブル」です。
HDD側が、SATA(7ピン)コネクタで、RAIDコントローラー側が、Mini-SAS HD(SFF-8643)コネクタになっています。
HDD側のSATA信号コネクタは、通常は4本のケーブルに分かれていますが、今回は3本しか使わないため、1本は途中でカットしています。
ケーブルは、自動車の配線に用いられる「ケーブルハーネス用フリース粘着テープ」(tesa製)を使って、きちんと結束し直してあります。
また、「示名条片」も、いい加減なモノが付けられていたため、TEPRA Proを使って作り直してあります。(Port0: #1~#3、Port1: #4~#6)
このファンアウトケーブルを2本使用し、6本のHDDをRAIDコントローラーに接続します。
こちらは、HDDとATX電源ユニットとを接続する、「フラットモジュラーケーブル」です。
HDD側が、SATA(15ピン)コネクタで、ATX電源ユニット側が、molexの5pinコネクタ(Mini-Fit Jr.シリーズ)になっています。
HDD側のSATA電源コネクタは、通常は4つのコネクタが接続されていますが、こちらも、今回は3つしか使わないため、1つは途中でカットしています。
このフラットモジュラーケーブルを2本使用し、6本のHDDをATX電源ユニットに接続します。
で、ですね。
ケーブルを改造しているうちに、すごいことを思い付いてしまいました。0xF9F8
SATA電源コネクタには、5本の太いケーブルが接続されていますが、
実際には、1本のケーブルに、3つの接点を持ったコンタクトが付いています。
よって、3つ × 5本で、15ピンとなっています。
で、Serial ATAの仕様を調べてみると、SATA電源コネクタの11番ピンには、「アクティブLED / スピンアップ制御」という信号が出ています。
この信号を使えば、個々のHDDのアクティブ状態が分かるのではないかと・・・。
RAIDコントローラーの基板上からも、「Global Act」(Global Active LED)という信号が取り出せるようになっています。(加えて、「Global Fault」いう信号も)
ただ、こちらの信号は、その名のとおり、どれか1つのHDDでもアクセスされていたら、アクティブになってしまいます。
やはり、NASのストレージのように、個々のHDDのアクティブ状態が知りたい訳です、チカチカと。0xF9CF
と、いうことで、さっそくコンタクトを改造。
3つの接点のうち、両隣の9番ピンと12番ピンとを、ミニニッパで切り落とし、ミニ平ヤスリで形を整えておきます。
ちなみに、画像では分かりませんが、コンタクトは、上面と下面の2枚構造になっていて、オス側のコンタクトピンが入ってきた時に、上下のコンタクトでピンを挟み込むようになっています。
コンタクトピンを改造したことにより、4本目のケーブルは、11番ピンの信号だけを取り出すことができます。
なお、9番ピンと12番ピンは、GNDなので、標準の状態では、11番ピンは、GNDに落とされていることになります。
えっ? 9番ピンと12番ピンとを切っちゃって、GNDはどうするのかって?
2本目のケーブル(4~6番ピン)もGNDで、これは生きているので、問題なっしんぐ。(と思う)0xF9C7
と、いいつつ、念のため。
「HUS728T8TALE6L4」の仕様上の最大電流(HDD本体ラベルに記載)は、+5Vが0.7A、+12Vが0.9Aで、計1.6A。これが1本のケーブルに3台接続されるので、合計4.8A。
対して、SATA電源コネクタの1ピンあたりの定格電流は1.5A。これが3ピンまとめて1本のケーブルになるので、合計4.5A。
よって、GNDのケーブルが1本減って、2本目のケーブルだけになったとして・・・、う~ん、ちょっと足りない。0xF999
(ケーブルの太さは、AWG18なので、十分ですが)
まぁ、3台のHDDが激しく読み書きされたとしても、+5Vと+12Vが同時に最大電流を迎えるとは考え難いので、良しとしよう。
いずれにしても、この改造をすると、1本のフラットモジュラーケーブルには、3台のHDDを接続するのがギリギリで、4台は危険、ということになるかと。
と、いうことで、フラットモジュラーケーブルを、さらに改造。
各コネクタから、「アクティブLED / スピンアップ制御」信号を取り出すとともに、+5VとGNDを取り出せるようにしています。
5本あるSATA電源コネクタの、4本目のケーブルを抜くことになりますが、せっかく「フラットケーブル」になっているので、これを最大限に活かすことにします。
一般的には、4本目のケーブルを抜くので、3本目と4本目、5本目と4本目のケーブルを切り裂いて分離することになります。
これだと、一番端の5本目のケーブルが、宙ぶらりんになってしまいます。
そこで、5本目のケーブルを切り離し、4本構成のフラットケーブルにし、4本目のケーブルを、コネクタの5本目(13~15番ピン)となるよう、入れ替えます。
molexのコネクタ(Mini-Fit Jr.シリーズ)を引き抜くには、専用の引き抜き工具を用いました。
フラットモジュラーケーブルを改造し、個々のHDDのアクティブ状態が拾えるようになったところで、「LEDチカチカ回路」を作ります。
「アクティブLED / スピンアップ制御」信号は、オープンコレクタ出力(負論理)なので、デジタルトランジスタ(RN2201)を使って反転し、緑色LEDを点灯させます。
RAIDコントローラーの基板上からも、「Global Act」と「Global Fault」を取り出し、緑色LEDと赤色LEDを点灯させます。
回路を解析したところ、アクティブで+1.6Vが出ていました。いわゆる、低輝度な(レガシーな)LEDの定格電圧です。
この電圧では、高輝度なLED(+3.0V等)を定格でドライブできないため、デジタルトランジスタを挟んで、+5Vを電源電圧として点灯させます。
また、こちらは、フォトカプラ(TLP2531)を使って、RAIDコントローラーの回路からは、電気的にアイソレートしています。
自作回路の裏側。
配線をパズルのように工夫して、ワイヤー配線は1ヶ所だけに抑えました。
このような感じで、スタックボックスに固定します。
底面には、ゴム足を貼り付けておきました。
HDDを6本も取り付けると、約4kgもの重量となることから、メンテナンス時に、机上などに安定的に静置するためです。
「フラッシュバックアップユニット」を取り付けたところ。
HDDをスタックボックスに組み込む前に、さらなる工夫をしておきます。
今回、PCファンやDCポンプ(いずれもPWM制御)をきめ細かく制御するために、EK Water Blocksの「EK-Loop Connect」を用いています。
「EK-Loop Connect」には、3つのサーモセンサーを取り付けることができますが、3つ目のポートが空いていることから、HDDの温度を拾って、PCファンの回転数を制御することにします。
画像左側は、「EK-Loop Connect」付属のサーモセンサーで、右側は、熱伝導両面テープです。
熱伝導両面テープを、適切な大きさに切り出し、サーモセンサーをHDDに貼り付けておきます。
ラジエーターの時と同様、PCファン用のケーブルを作製します。
「EK-Loop Connect」で、PCファンをPWM制御するとともに、「SCKM-1000」(PCファンコントローラー)で、回転数をモニターできるようにしています。
6本のHDDを組み込んだところです。
HDDの強制冷却用の静音ファン、noctuaの「NF-A12x25 PWM」を取り付けたところです。
サーモセンサー付きのHDDは、PCファンから最も遠く、温度が高くなりそうな、一番奥で真ん中のHDDとしました。
(画像は、Porsche AG.より拝借)
組み立てた後に気が付いたのですが、なんとなく、Porscheの空冷エンジンの構成に似ているような・・・。
同じ6発(6台)ですし。0xF9CF
SATAケーブル、SATA電源ケーブル等を配線したところです。
かなりの配線量となりました。
「フラッシュバックアップユニット」のバッテリーパックに接続するケーブルも、改造します。
改造にあたり、Molexのモジュラーハウジングに適合する、コンタクトピン(オス)を調達しました。
上段が標準の状態で、下段が加工後の状態です。
引き回し距離を想定し、かなりの“シャコタン仕様”としました。
RAIDのスタックボックスを、PCケースにビルトインしたところです。
設計通りといえば、その通りですが、水冷ループのフィッティングとのクリアランスは3~4mm程度と、ギリギリでした。
(つづく)
Post Comment