前回の続きです。
グラフィックボード(ビデオカード)の水冷化につづき、 RAIDカードの水冷化に掛かります。
ターゲットは、こちら。
NECのRAIDコントローラ、「N8103-178」です。
NECのPCサーバ、Express5800シリーズ用のオプションですが、中身としては、LSIの「MegaRAID SAS 9362-8i」となっています。
MegaRAIDというRAIDカードは、元々「LSI Logic」という会社がリリースしていましたが、その後、2014年に「Broadcom」に買収され、さらに、2016年に現在の「Avago Technologies」に買収されるという、IT企業ならではの、数奇な運命を辿っています。
「RAIDカードの水冷化(2)」(2014年8月30日)
LEDを仮点灯。
ちなみに、こちらは、以前にLSIの「MegaRAID SAS 9265-8i」を水冷化し、日亜化学の超高輝度LED、「NSPG300A」を組み込んだ時の模様です。
このRAIDコントローラ、「N8103-17x」シリーズにも、いくつかのバリエーションがあります。
今回購入したものは、フラッシュバックアップユニット付きの、キャッシュ容量が2GBのものです。(N8103-177以下は、1GB)
また、RAIDレベルも、下位機種(N8103-176)では、RAID 0/1しか組めませんが、N8103-177以上は、RAID 0/1/5/6/10/50/60という、複雑な構成を組むことができます。
なお、最大転送レートは、シリーズ共通で、SATAで「6Gbps」、SASで「12Gbps」となっています。
こちらが、増設分のキャッシュメモリが載った、「フラッシュバックアップユニット」です。
NECのラベルが付いていますが、LSIの商品名としては、「CacheVault Kit」となります。
ちなみに、RAIDカード用のドライバーやファームウェア、管理ツールも、兄弟モデルである、LSIの「MegaRAID SAS 9361-8i」用のものが、そのまま使えます。
以下、面倒くさいため、OEM元であるLSIの型番、「SAS 9362-8i」と表記することにします。
「SAS 9362-8i」の裏面です。
「SAS 9362-8i」を、Asusの「WS C621E Sage」に仮組みし、起動してみると・・・、
なんと、RAIDを構成せず、負荷を掛けていないにも関わらず、100℃近い温度になっています。
#これは、まずい!0xF9FC
大きなヒートシンクを背負ってはいますが、巨大なビデオカード(2枚)に妨げられ、空気の流れが、かなり滞っているものと思われます。
と、いうことで、
さっそく、水冷化のため、分解に掛かります。
アルミ製のヒートシンクを、取り外したところです。
上段中央が、「SAS 9362-8i」用のもので、右側が、「SAS 9265-8i」用のものです。
「SAS 9362-8i」用のヒートシンクは、「SAS 9265-8i」用のものに比べ、1.5倍ほどの大きさがありますが、取り付け穴の位置関係は、まったく同じでした。
#以前の図面が、そのまま使える。ラッキー!0xF9CF
RAIDコントローラとして、「LSISAS3108」というプロセッサが載っています。
チップ表面に塗布された、サーマルコンパウンド(熱伝導グリス)を、清掃したところです。
「LSI」のロゴが見えます。
#感慨深い。0xF9C5
ウォーターブロックは、以前と同様、CPUのチップセット用のものを使います。
ただ、すでに「EK-NB ASUS HP」はディスコンになってから久しいため、現在手に入れることができる「EK-ASUS NB/SB 4 - Acetal」を選びました。
90°アングルのフィッティングは、この2022年1月に発表され、順次発売開始となっている、「EK-Quantum Torque Micro Rotary 90° - Black」(13.99ドル/個)を使います。
何が“Micro”なのかと言うと、組み込み時の高さが20.75mmで、これが従来のものより10mm以上低い(ロープロファイル、低頭)ものとなっているためです。
以前も、RAIDカードとビデオカードとの間は、2スロット分(約40mm)しかありませんでしたが、今回は、ビデオカードに「バックプレート」を取り付けたことにより、さらに隣接高さを低くする必要があります。
実測で、34mm以内に収める必要があることから、「EK-Quantum Torque」シリーズの通常のフィッティングは使わず、“Micro”に、バーブフィッティング(EK-HFB Fitting 12mm - Black)を組み合わせることにしました、
と、いうことで、
EK Water Blocksの仕様書を基に、
Fusion 360を使って、「RAIDカード用水冷ブロック取付プレート」をモデリングし、
金属加工屋さんに、レーザー加工してもらいました。
素材は、1.5mm厚のステンレス(SUS304)板です。
#Snapmaker 2.0にも「レーザーモジュール」がありますが、こんな分厚いステンレス板は切れないので。
タップでM3のネジ山を切って、「EK-ASUS NB/SB 4 - Acetal」を固定します。
「デュアルCPUマシンを作る(4) - 水冷化の準備」(2021年11月27日)
LGA3647用ということで、予想以上に大きいです。
まさに「金属削り出し」という感じで、ずっしりと重いです。
CPU用の水冷ブロック、「EK-Annihilator Pro - Square ILM」と、なんとなくデザインが合っています。
#やっぱし、コーディネートは、こうでぃねぇと。0xF9C7
水冷ブロックを、RAIDカードに、取り付けたところです。
水冷ブロックは、5mmのジュラコン製スペーサーと、0.5mmの平ワッシャーを組み合わせ、RAIDコントローラの表面に、密着させています。
RAIDコントローラの表面には、当然ながら、高熱伝導率のサーマルコンパウンドを塗布してあります。
なお、基板上には、M3のスペーサー(外径6mm)のギリギリ近傍に、ケシ粒のように小さいチップ抵抗(1608)がありました。
水冷ブロックを組み込んでいる途中で分かったのですが、気付いていなかったら、スペーサーを締め込んだ際に、潰してしまうところでした。
#危ない、アブナイ。0xF9C8
基板の裏面です。
M3の六角穴付ボタンボルトには、ファイバーワッシャーを挟んで、基板と絶縁してあります。
準備ができたところで、RAIDカードをマザーボードに仮組みし、ビデオカードとの間隔を見てみます。
んが、“Micro”フィッティングを以てしても、まだ、天地が高いようです。
スロットに、正しく挿入できません。
仕方がないので、お決まりの「改造」。
90°アングルのベースの部分は、金属でできているため、そう簡単には切削できません。
そこで、水冷ブロックのベースの部分(アセタール樹脂製)を、切削することにしました。
フィッティングのベースの部分が収まる穴の外周を、「Snapmaker 2.0 A350」でミリングし、2.7mmほど低くします。
左側の穴が、標準の状態、右側の穴が、切削加工した状態です。
フィッティングの穴の軸中心と、エンドミルによる切削の回転中心とを、精確に合わせるためには、ちょっとしたコツが必要となります。
#んが、そこはナイショということで。0xF9CD
90°アングルを、取り付けた状態です。(左側が、標準の状態、右側が、切削加工した状態)
#しっかり、“シャコタン”(車高短)になってます。0xF9F8
3mmに満たない違いですが、このわずかな違いが、ビデオカードのバックプレートに干渉しないかどうかの鍵となります。
で、仮組みしてみたのですが、まだ天地が高いようです。
そこで、バーブフィッティングのグリップのところを、さらに切削加工しました。
#シャコタン+ドロップヘッド。0xF9CF
グリップは、樹脂でできているのかと思っていたのですが、削ってみたら、金属でした。
水冷ブロックを、RAIDカードに、改めて取り付けたところです。
上段が、「MegaRAID SAS 9362-8i」(N8103-178)の水冷化前、下段が、水冷化後です。
#なぜか、同じRAIDカードを2枚持っているという。0xF9F8
RAIDカードをマザーボードに組み込み、ビデオカードとの間隔を見てみます。
90°アングルと、ビデオカードの「バックプレート」とのクリアランスは、0.8mm程度でした。
まさに、ギリギリです。
2つのCPUと、2つのGPUとの間で分断したチューブを繋ぎ、水冷ループを構成し直します。
精製水で漏水チェックと内部洗浄をした後、クーラントを注入します。
さて、それでは、いよいよ電源を入れてみます。
#ドキがムネムネ。0xF992
効果テキメン。
内部温度は、40℃前後で安定し、空冷に比べ、60℃もの温度降下が確認できました。
#素晴らしいっ!!0xF9CF
動作状態は、このような感じ。
(つづく)
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