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デュアルCPUマシンを作る(6) - 水冷パーツの組込

2022/01/03

 前回の続きです。

 EKWBのウォーターブロックを組み込む前に、気になるところを改修します。

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Machine Water Cooling

 Asusの「WS C621E Sage」のマザーボードの一部です。

 LGA3647ソケットの上部(画像は、天地逆)には、VRMチップを冷却(放熱)するためのヒートシンクが付いています。

 このVRMチップ用のヒートシンクですが、以前にAsusの「RAMPAGE IV Black Edition」を水冷化した際に、分かったことがあります。

次期主力戦闘機製造(マザーボードの水冷化)(1)」(2014年11月8日)

EK-FB ASUS R4BE Monoblock - Nickel

 分解してから気付いたのですが、純正の状態(上側の黒いヒートシンク)では、サーマルパッドの長さが足りず、すべてのVRMチップにサーマルパッドが当たっていないことが分かりました。

 気になって、マザーボード裏側のバックプレートも確認してみたところ、こちらも同様でした。サーマルパッドの長さは合っているものの、貼り付け位置が間違っているため、すべてのVRMチップにサーマルパッドが当たっていませんでした。

#さすがは、「Made in China」クオリティー。0xF9D1

 ちゅーこく製を、まったく信用していないので、念のため、サーマルパッドを貼り直すことにします。0xF9D1

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Machine Water Cooling

 マザーボードの裏面です。

 VRMチップ用のヒートシンクは、2本のボルトを外すことで、取り外すことができます。

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Machine Water Cooling

 ヒートシンクを取り外したところです。

 幸いなことに、左右どちらのヒートシンクとも、しっかりサーマルパッドが貼り付けられていました。

#んが、しかし、油断は禁物、ちゅーこく製は。0xF9D1

Thermal Grizzly Minus Pad 8 and High End Thermal Grease for Dual CPU Machine Water Cooling

 純正のサーマルパッドは、1.5mm厚であったため、同じ厚さのサーマルパッドを用意します。

 ドイツ、Thermal Grizzly社製の「minus pad 8」を使います(画像左)。その名のとおり、「8.0W/m・K」の熱伝導率を持っています。

 画像右は、CPUに塗布するサーマルコンパウンドです。

 同じく、Thermal Grizzly社製のOC向けハイエンドグリス、「TG-K-030-R」です。熱伝導率は、「12.5W/m・K」です。

 今回は、2つのCPUだけでなく、2つのGPUにも使用するため、少し多めの、3mlのものを購入しました。

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Machine Water Cooling

 サーマルパッドを、所定の大きさに切り出し、VRMチップに貼り付けます。

 サーマルパッドは、ヒートシンクに貼り付けてからVRMチップに被せるか、VRMチップに貼り付けてからヒートシンクに被せるか、という問題がありますが、今回は後者にしました。

 「minus pad 8」には、表面にツブツブが入っている面と、ツルツルの面があり、前者をヒートシンク側にすれば、余計な空気が抜けるのではないか、という読みです。

#正しいかどうかは、分かりません。0xF9C7

 取り外したのと逆順で、ヒートシンクを取り付けます。

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Intel C621 Chipset

 Intel C621チップセット用のヒートシンクも、同様に処理します。

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Intel C621 Chipset

 マザーボードの裏面です。

 Intel C621チップセット用のヒートシンクは、4本のスプリング付きボルトを外すことで、取り外すことができます。

 さて、マザーボード上のヒートシンクの改修ができたところで、フィッテングに取り掛かります。

Loctite 572 for Dual CPU Machine Water Cooling

 Loctiteの金属配管用のシール剤、「Loctite 572」です。

 水冷PCのパイピングにシール剤を用いることは、“禁じ手”らしいですが、別に気にしません。

#そんなこと、誰が決めたんだよ、と。0xF9D1

 シール剤がクーラントに溶出せず、ウォーターブロック等に化学的/物理的な影響を与えることがなければ、なんら問題はありません。

 なぜにシール剤を用いることにしたかというと、以前に、Asusの「Maximus IV Extreme」を水冷化した際に、分かったことがあります。

Cooling Master? -- Cleaning the Inside of the Tube (2) --」(2012年2月18日)

waterblock02.jpg

 「EK Water Blocks」の水冷ブロックと「Koolance」のフィッティングとの組み合わせには、まったく問題が無かったのですが、「Phobya」の温度センサーと「Koolance」のフィッティングとの間で問題が発生しました。

 温度センサーの首下が微妙に長く、僅か1.5mmほどの隙間から、蒸留水がしみ出すように漏れていました。

 写真のように、防水シールテープを巻いてもダメで、けっきょくは、「Oリング」を内部に挟んで解決することができました。

 同じG1/4のフッティングでも、メーカの異なるものを組み合わせると、漏水する可能性があるということです。

 今回は、ほぼすべてのパーツを「EK Water Blocks」で揃えましたが、1種類だけ、「Aquacomputer」のところがあります。

 ラジエーターのイン側(冷却前)とアウト側(冷却後)に設置する、「水温センサー」の部分です。

#水温センサーなら、「EK Water Blocks」からも出ているのに、なぜに「Aquacomputer」のものを用いたかについては、こちらを参照。

Loctite 572 for Dual CPU Machine Water Cooling
(画像は、Henkel Japanから拝借)

 Loctiteからは、たくさんの種類のシール剤が出ていますが、この中から、今回は「Loctite 572」(50ml)を選びました。

 一般ねじ込み配管継ぎ手用のもので、脱出トルクも中硬度で、手頃な値段(他と比べれば)となっています。

 このシール剤は、「嫌気性」で、通常の状態では硬化せず、継ぎ手に塗布後、ねじ込んで空気を遮断すると、硬化します。

 この「Loctite 572」ですが、独特の匂いがします。といっても、イヤな匂いではなく、柑橘類っぽい匂いがします。

#んが、しかし、これがけっこう匂います。0xF9C8

 この匂いがイヤなヒト向けに、低臭気タイプの「Loctite 575」というものが出ていますが、こちらは「Loctite 572」に対し、脱出トルクが少し高く(=外す時に硬い)なっています。

 前置きが長くなりましたが、前述のシール材を用いて、フィッティングの漏水防止処理をします。

EK Water Blocks and Aquacomputer Temperature Sensor Internal/External Thread G1/4

 「Aquacomputer」の水温センサーに、「EK Water Blocks」のフィッティングを組み合わせたところです。

 ネジが切ってあるところに、小型のマイナスドライバーなどを使って、1周分、シール剤を塗布し、ねじ込みます。

 あまり付け過ぎず、少量で十分です。

 また、締め込みは、レンチなどは使わず、手の力だけで締め込みます。

EK Water Blocks and Aquacomputer Temperature Sensor Internal/External Thread G1/4

 上面のラジエーターのアウト側に、取り付けたところです。

 硬化するまで相応の時間を要することから、通水するには、少なくとも1日以上空けることにします。

EK-Annihilator Pro - Square ILM Intel LGA3647 Xeon

 EK Water Blocksの「EK-Annihilator Pro - Square ILM」に、フィッティングを取り付けたところです。

 ほとんど、金属の塊のようになっています。

Asus WS C621E SAGE Dual CPU Machine Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX

 Intelの「Xeon Gold 5220R BOX」を、LGA3647ソケットに、慎重にはめ込みます。

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 サーマルコンパウンドを適量塗布し、ウォーターブロックをCPUに被せます。

 4本のボルトを、クルマのホイールの組み付けと同じく、対角線状に順番に締め付け、固定します。

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 左バンクも、同様に取り付けます。

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 ソフトチューブを組み込みます。

 PCケースにマザーボードを組み込んでからソフトチューブを取り付けると、マザーボードに負荷が掛かりそうなため、デュアルになっている部分のみ、先に組み込みました。

 水冷ループの基本は、外径16mm/内径12mmとしていますが、デュアルになっている部分のみ、外径は変えず、内径を10mmとして、流速を落とさないよう工夫しています。

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 マザーボードをPCケースに組み込みます。

 適切なトルクでマザーボードを固定した後、ソフトチュープを使って水冷ループを構成していきます。

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 DCポンプ付きリザーバー、「EK-DBAY D5 MX - Acetal」には、サービスポートが1つあり、メクラ栓(G1/4プラグ)が取り付けられています。
(DCポンプを組み込まず、リザーバーとしてのみ使用する場合のもの)

 このメクラ栓に換えて、「EK-PLUG G1/4 Plexi (LED 5mm)」を取り付けておきます。ゆくゆくは、ここにオリジナルのφ5mmのアドレサブルLEDを組み込む予定です。

Koolance Drain Valve VLV-13TSPL for Dual CPU Machine

 水冷ループの後半に、ドレイン(ドレン)を取り付けます。

 ドレインバルブには、Koolanceの「VLV-13TSPL」を使います。

 EK Water Blocksからも、「ドレインバルブ」や「ボールバルブ」が出ていますが、これらを使うと、高さ方向にある程度の余裕が必要となります。
(スプリッターなどと組み合わせると、けっこうな高さになり、天地が足りなくなってしまいます)

 今回は、ラジエーターのイン側で、水冷ループにおける最下点(PCケースの底部)に設置したいため、Koolanceのものを用いました。

Koolance Drain Valve VLV-13TSPL for Dual CPU Machine

 このような感じで、ぴったり取り付けられました。

 ドレインバルブの下流側で、ラジエーターのイン側の直前には、Aquacomputerの水温センサーを組み込んであります。

 クイックリリースバルブも便利ですが、この方法であれば、PCケースの内部に手を入れずとも、ドレインバルブを外せば、超簡単にクーラントを排出することができます。0xF9C6

Koolance Drain Valve VLV-13TSPL for Dual CPU Machine

 PCケースの底面です。

 ドレインバルブを外すと、外径10mm/内径6mmのソフトチューブを接続することができます。このソフトチューブの先に、ファンネル(ファネル、漏斗)を取り付ければ、クーラントを充填することができます。

 すなわち、ドレインとしてだけでななく、フィルポートとしても利用することができます。

 5.25inchのドライブベイに取り付けたDCポンプ付きリザーバーにも、フィルポートがありますが、ここにアクセスするためには、わざわざ前面パネルを外さなければなりません。

 この位置にフィルポートがあれば、PCケースを横倒しにすれば、すぐにクーラントを充填することができ、メンテナンス性が大幅に向上します。0xF9C6

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 水冷ループが完成したところです。

 一気に組み上げた場合、万が一、不具合があった時のダメージが大きくなるため、今回は2つのGPUを組み込まず、2つのCPUのみで動作確認を行います。

 この状態でDCポンプを稼働させ、24時間程度、水冷ループに通水し、漏水などが起きないことを確認します。

Intel LGA3647 Xeon Gold 5220R BOX Water Cooling

 この段階では、クーラントは使わず、ラジエーターなどの内部洗浄を兼ね、精製水を用いています。

 今回は、2回ほど精製水を入れ替え、ウォーターブロック切削時の切削油など、わずかな不純物が残らないよう、配意しました。

 1回目は、常温で、2回目は、ヤカンで50℃前後に温めた精製水をフィルポートから流し込み、内部洗浄しています。

(つづく)

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