前回の続きです。
EKWBのウォーターブロックを組み込む前に、気になるところを改修します。
Asusの「WS C621E Sage」のマザーボードの一部です。
LGA3647ソケットの上部(画像は、天地逆)には、VRMチップを冷却(放熱)するためのヒートシンクが付いています。
このVRMチップ用のヒートシンクですが、以前にAsusの「RAMPAGE IV Black Edition」を水冷化した際に、分かったことがあります。
「次期主力戦闘機製造(マザーボードの水冷化)(1)」(2014年11月8日)
分解してから気付いたのですが、純正の状態(上側の黒いヒートシンク)では、サーマルパッドの長さが足りず、すべてのVRMチップにサーマルパッドが当たっていないことが分かりました。
気になって、マザーボード裏側のバックプレートも確認してみたところ、こちらも同様でした。サーマルパッドの長さは合っているものの、貼り付け位置が間違っているため、すべてのVRMチップにサーマルパッドが当たっていませんでした。
#さすがは、「Made in China」クオリティー。0xF9D1
ちゅーこく製を、まったく信用していないので、念のため、サーマルパッドを貼り直すことにします。0xF9D1
マザーボードの裏面です。
VRMチップ用のヒートシンクは、2本のボルトを外すことで、取り外すことができます。
ヒートシンクを取り外したところです。
幸いなことに、左右どちらのヒートシンクとも、しっかりサーマルパッドが貼り付けられていました。
#んが、しかし、油断は禁物、ちゅーこく製は。0xF9D1
純正のサーマルパッドは、1.5mm厚であったため、同じ厚さのサーマルパッドを用意します。
ドイツ、Thermal Grizzly社製の「minus pad 8」を使います(画像左)。その名のとおり、「8.0W/m・K」の熱伝導率を持っています。
画像右は、CPUに塗布するサーマルコンパウンドです。
同じく、Thermal Grizzly社製のOC向けハイエンドグリス、「TG-K-030-R」です。熱伝導率は、「12.5W/m・K」です。
今回は、2つのCPUだけでなく、2つのGPUにも使用するため、少し多めの、3mlのものを購入しました。
サーマルパッドを、所定の大きさに切り出し、VRMチップに貼り付けます。
サーマルパッドは、ヒートシンクに貼り付けてからVRMチップに被せるか、VRMチップに貼り付けてからヒートシンクに被せるか、という問題がありますが、今回は後者にしました。
「minus pad 8」には、表面にツブツブが入っている面と、ツルツルの面があり、前者をヒートシンク側にすれば、余計な空気が抜けるのではないか、という読みです。
#正しいかどうかは、分かりません。0xF9C7
取り外したのと逆順で、ヒートシンクを取り付けます。
Intel C621チップセット用のヒートシンクも、同様に処理します。
マザーボードの裏面です。
Intel C621チップセット用のヒートシンクは、4本のスプリング付きボルトを外すことで、取り外すことができます。
さて、マザーボード上のヒートシンクの改修ができたところで、フィッテングに取り掛かります。
Loctiteの金属配管用のシール剤、「Loctite 572」です。
水冷PCのパイピングにシール剤を用いることは、“禁じ手”らしいですが、別に気にしません。
#そんなこと、誰が決めたんだよ、と。0xF9D1
シール剤がクーラントに溶出せず、ウォーターブロック等に化学的/物理的な影響を与えることがなければ、なんら問題はありません。
なぜにシール剤を用いることにしたかというと、以前に、Asusの「Maximus IV Extreme」を水冷化した際に、分かったことがあります。
「Cooling Master? -- Cleaning the Inside of the Tube (2) --」(2012年2月18日)
「EK Water Blocks」の水冷ブロックと「Koolance」のフィッティングとの組み合わせには、まったく問題が無かったのですが、「Phobya」の温度センサーと「Koolance」のフィッティングとの間で問題が発生しました。
温度センサーの首下が微妙に長く、僅か1.5mmほどの隙間から、蒸留水がしみ出すように漏れていました。
写真のように、防水シールテープを巻いてもダメで、けっきょくは、「Oリング」を内部に挟んで解決することができました。
同じG1/4のフッティングでも、メーカの異なるものを組み合わせると、漏水する可能性があるということです。
今回は、ほぼすべてのパーツを「EK Water Blocks」で揃えましたが、1種類だけ、「Aquacomputer」のところがあります。
ラジエーターのイン側(冷却前)とアウト側(冷却後)に設置する、「水温センサー」の部分です。
#水温センサーなら、「EK Water Blocks」からも出ているのに、なぜに「Aquacomputer」のものを用いたかについては、こちらを参照。
(画像は、Henkel Japanから拝借)
Loctiteからは、たくさんの種類のシール剤が出ていますが、この中から、今回は「Loctite 572」(50ml)を選びました。
一般ねじ込み配管継ぎ手用のもので、脱出トルクも中硬度で、手頃な値段(他と比べれば)となっています。
このシール剤は、「嫌気性」で、通常の状態では硬化せず、継ぎ手に塗布後、ねじ込んで空気を遮断すると、硬化します。
この「Loctite 572」ですが、独特の匂いがします。といっても、イヤな匂いではなく、柑橘類っぽい匂いがします。
#んが、しかし、これがけっこう匂います。0xF9C8
この匂いがイヤなヒト向けに、低臭気タイプの「Loctite 575」というものが出ていますが、こちらは「Loctite 572」に対し、脱出トルクが少し高く(=外す時に硬い)なっています。
前置きが長くなりましたが、前述のシール材を用いて、フィッティングの漏水防止処理をします。
「Aquacomputer」の水温センサーに、「EK Water Blocks」のフィッティングを組み合わせたところです。
ネジが切ってあるところに、小型のマイナスドライバーなどを使って、1周分、シール剤を塗布し、ねじ込みます。
あまり付け過ぎず、少量で十分です。
また、締め込みは、レンチなどは使わず、手の力だけで締め込みます。
上面のラジエーターのアウト側に、取り付けたところです。
硬化するまで相応の時間を要することから、通水するには、少なくとも1日以上空けることにします。
EK Water Blocksの「EK-Annihilator Pro - Square ILM」に、フィッティングを取り付けたところです。
ほとんど、金属の塊のようになっています。
Intelの「Xeon Gold 5220R BOX」を、LGA3647ソケットに、慎重にはめ込みます。
サーマルコンパウンドを適量塗布し、ウォーターブロックをCPUに被せます。
4本のボルトを、クルマのホイールの組み付けと同じく、対角線状に順番に締め付け、固定します。
左バンクも、同様に取り付けます。
ソフトチューブを組み込みます。
PCケースにマザーボードを組み込んでからソフトチューブを取り付けると、マザーボードに負荷が掛かりそうなため、デュアルになっている部分のみ、先に組み込みました。
水冷ループの基本は、外径16mm/内径12mmとしていますが、デュアルになっている部分のみ、外径は変えず、内径を10mmとして、流速を落とさないよう工夫しています。
マザーボードをPCケースに組み込みます。
適切なトルクでマザーボードを固定した後、ソフトチュープを使って水冷ループを構成していきます。
DCポンプ付きリザーバー、「EK-DBAY D5 MX - Acetal」には、サービスポートが1つあり、メクラ栓(G1/4プラグ)が取り付けられています。
(DCポンプを組み込まず、リザーバーとしてのみ使用する場合のもの)
このメクラ栓に換えて、「EK-PLUG G1/4 Plexi (LED 5mm)」を取り付けておきます。ゆくゆくは、ここにオリジナルのφ5mmのアドレサブルLEDを組み込む予定です。
水冷ループの後半に、ドレイン(ドレン)を取り付けます。
ドレインバルブには、Koolanceの「VLV-13TSPL」を使います。
EK Water Blocksからも、「ドレインバルブ」や「ボールバルブ」が出ていますが、これらを使うと、高さ方向にある程度の余裕が必要となります。
(スプリッターなどと組み合わせると、けっこうな高さになり、天地が足りなくなってしまいます)
今回は、ラジエーターのイン側で、水冷ループにおける最下点(PCケースの底部)に設置したいため、Koolanceのものを用いました。
このような感じで、ぴったり取り付けられました。
ドレインバルブの下流側で、ラジエーターのイン側の直前には、Aquacomputerの水温センサーを組み込んであります。
クイックリリースバルブも便利ですが、この方法であれば、PCケースの内部に手を入れずとも、ドレインバルブを外せば、超簡単にクーラントを排出することができます。0xF9C6
PCケースの底面です。
ドレインバルブを外すと、外径10mm/内径6mmのソフトチューブを接続することができます。このソフトチューブの先に、ファンネル(ファネル、漏斗)を取り付ければ、クーラントを充填することができます。
すなわち、ドレインとしてだけでななく、フィルポートとしても利用することができます。
5.25inchのドライブベイに取り付けたDCポンプ付きリザーバーにも、フィルポートがありますが、ここにアクセスするためには、わざわざ前面パネルを外さなければなりません。
この位置にフィルポートがあれば、PCケースを横倒しにすれば、すぐにクーラントを充填することができ、メンテナンス性が大幅に向上します。0xF9C6
水冷ループが完成したところです。
一気に組み上げた場合、万が一、不具合があった時のダメージが大きくなるため、今回は2つのGPUを組み込まず、2つのCPUのみで動作確認を行います。
この状態でDCポンプを稼働させ、24時間程度、水冷ループに通水し、漏水などが起きないことを確認します。
この段階では、クーラントは使わず、ラジエーターなどの内部洗浄を兼ね、精製水を用いています。
今回は、2回ほど精製水を入れ替え、ウォーターブロック切削時の切削油など、わずかな不純物が残らないよう、配意しました。
1回目は、常温で、2回目は、ヤカンで50℃前後に温めた精製水をフィルポートから流し込み、内部洗浄しています。
(つづく)
Post Comment