前回の続きです。
水冷化のためのパーツが揃ったところで、いよいよ各パーツを組み込んでいくことにします。
まずは、ラジエーターの取り付けです。
CoolerMasterの「CM 690 III」は、もともと上面に、簡易水冷用のラジエーターを組み込むことが想定された作りになっています。
よって、厚さが28mmの「EK-CoolStream SE 240 (Slim Dual)」は、簡単に取り付けることができます。
とは言え、ラジエーターのインレット/アウトレットの“出っ張り”が予想以上に大きいため、いちおう、事前にしっかり採寸し、想定された位置に取り付けられるかどうか、ちゃんと確認していますが。
このような感じで、ピッタリと収まります。
問題は、前面に取り付ける、少し分厚めのラジエーターです。
(画像は、CoolerMasterから拝借)
上面と同様、前面にも簡易水冷用のラジエーターを組み込むことが想定されていますが、クーラントのインレット/アウトレットは、上端になるように設計されています。
これは、簡易水冷のため、クーラントを交換する必要がないことと、上端にすることで、パイピングの距離を短くすることができるためです。
一方、本格水冷の場合は、定期的にクーラントを交換する必要があります。
#まるで、クルマの12ヶ月点検のように。
クーラントを効率的に抜くには、ドレイン(ドレン)が下側にあった方が良い訳で、これに連動し、ラジエーターのインレット/アウトレットは、下端にくるように設置したくなります。
しかしながら、前述のとおり、インレット/アウトレットが上端になるように設計されているため、ラジエーターの取り付け方向を天地逆さまにすると、固定ボルトの位置が、まったく合わなくなります。
さらに、前面パネルの裏側は、鉄板の強度(剛性)を上げるためか、一部のエッジが折り返されていて、これが干渉物となって、ラジエーターをピッタリと取り付けることができなくなっています。
そこで、この干渉物を避け、ラジエーターを前面パネルにピッタリと取り付けられるよう、オリジナルの「ラジエータープレート」を設計し、作製します。
マザーボードの「バックプレート」の時と同様、Fusion 360を使って、モデリングします。
5mm厚のアクリル板を、Snapmaker 2.0 A350でミリングします。
削り出された、「ラジエータープレート」です。
ラジエーターやPCファンの取り付け穴の位置だけでなく、前面パネルの開口部の形状を、精確に再現しています。
素材の色は、いずれ見えなくなってしまうため、「ブラック」で良かったのですが、“nVIDIAグリーン”に近い色があったため、敢えてそれを選びました。
「クロムグリーン」という色です。
ラジエーターに、プレートを取り付けたところです。
ラジエーターは、上面パネルに取り付けたものよりも分厚く、放熱性能の高い、「EK-CoolStream PE 240 (Dual)」(厚さ40mm)です。
取付ボルトは、ラジエータープレートとのツラが同一となるよう、皿ボルトを使っています。よって、プレートには、皿ザグリを入れてあります。
皿ザグリは、フラットエンドミル(φ2mm)とボールエンドミル(φ1.0mm)を使い分けて、削り出しています。
ラジエーター側の取り付け穴は、インチネジ(UNC#6)になっています。アクリル板の厚みに合わせて、「#6×3/8」(長さ9.5mm)を使っています。
ちなみに、PCファンやPCケースの取り付け穴は、ミリネジ(M3)になっているため、それに合わせています。
#ややこしい!0xF9C8
PCケース側の取り付け穴は、φ2.6mmの下穴を空けて、ハンドタップでM3のネジ山を切ってあります。
PCファン側は、PCケース側から伸びてきたM3×30mmのボルトのアシが逃げられるよう、φ4.0×2.5mmの凹みを入れてあります。
前面パネルに、ラジエーターを取り付けたところです。
ラジエーターは、PCケースに対し、M3×8mmのボルト8本で、ガッチリ固定されています。不要な振動とは、無縁です。
オリジナルのプレートを使ってラジエーターの取付方向(位置)を工夫したことにより、水冷ループの経路上で、最も低い位置にドレインを設けることができるようになりました。
前面パネルを、正面から見たところです。
このまま純正パーツとして売り出しても良いくらい、開口部の形状が、精確に再現されています。
PCケース側の“nVIDIAグリーン”との組み合わせも、バッチリです。
#コーディネートは、こーでねぇと!0xF9CF
ラジエーターが固定できたところで、ドレインバルブを取り付ける準備をします。
電動ドリルで下穴を空け、シャーシリーマーで所定の大きさに拡大します。
つづいて、前面パネル上部の工夫です。
以前に記述したとおり、前面パネル上部は、フォームファクタ「SSI-EEB」のマザーボードを収容するため、5.25inchのドライブベイをはじめ、すべて取っ払ってしまいました。
画像のように、すっかすかになっています。
そこで、元あった位置に、「EK-DBAY D5 MX - Acetal」などを取り付けられるよう、オリジナルの「ドライブベイプレート」を設計し、作製します。
Fusion 360を使って、モデリングします。
5mm厚のアクリル板を、Snapmaker 2.0 A350でミリングします。
M3のワッシャー(φ7.8mm)の逃げです。
円筒形の部分は、φ2.0mmのフラットエンドミルで荒削りした後、R0.5mm(φ1.0mm)のボールエンドミルで滑らかになるよう仕上げています。
削り出したアクリル板を、組み合わせます。
アクリル板は、「ジクロロメタン」(アクリル樹脂専用の接着剤)を使って“溶着”しています。
素材として一体となっているため、通常の接着とは異なり、めったなことでは外れません。
PCケースに、「ドライブベイプレート」を固定。
「EK-DBAY D5 MX - Acetal」と、ScytheのPCファンコントローラー「SCKM-1000」を固定。
静音PCファン、noctuaの「NF-A12x25 PWM」を固定。
前面パネルをはめ込んだところ。
やっとここまでたどり着きました。0xF9C6
(つづく)
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