前回の続きです。
前回は、Snapmaker 2.0 A350を組み立て、CNC加工をするのための準備をしました。
具体的には、リニアモジュールに「CNCモジュール」を取り付け、プラットフォームに「CNCワークボード」(CNC Carving Platform)を取り付けました。
こちらは、Snapmaker 2.0付属の、CNC加工用のツール類です。
右側が、φ1.5mmのフラットエンドミルと、R1.5875mm(φ3.175mm)のボールエンドミル、左側が、コレットとコレットナットになります。
コレットサイズはER11で、シャンク径φ3.175mm(1/8 inch)までのエンドミルを取り付けることができます。
が、しかし、日本国内では、“インチ系”のエンドミルは、バリエーションがほとんどありません。
今後のことを考え、エンドミルとコレットは、別のモノに取り換えることにしました。
右側は、φ2.0のフラットエンドミルと、φ4.0mmのフラットエンドミルです。
いずれも、シャンク径はφ4.0mmです。
左側は、シャンク径φ3.5~4.0mmを把握できるコレット(スプリングコレット)です。
その名のとおり、Snapmaker 2.0付属のものより、スリットが細かく入っており(16分割)、高い精度でエンドミルを把握することができます。(振れ精度:5μm)
なお、画像には写っていませんが、φ1.0mmのフラットエンドミルも、揃えておきました。
φ4.0mmは荒削り、φ2.0mmは中削り、φ1.0mmは仕上げ削りとして使います。
Snapmaker 2.0付属のコレットナットに、スプリングコレットを取り付けたところです。
当たり前ですが、ぴったりと嵌まります。
後から気付いたのですが、一つ重要なことが。
マニュアルには、「エンドミルの上端は、コレットの上端から出ないように」と書かれていました。
Snapmaker 2.0付属のエンドミル(φ1.5mmフラット)は、全長45mmなのに対し、購入したエンドミルは、全長55~60mmもあります。
CNCモジュール側の深さを調べてみたのですが、コレット長(18mm)に対し、若干余裕があるぐらいでした。
コレットの把握位置に対し、シャフト長が長くなり過ぎると、先端に微妙なブレが出てしまいます。
「これは、まずい!」と思ったのですが、「まぁ、10~15mmぐらいであれば、大したブレは出ないだろう」ということで、このまま使うことにしました。
(この程度の長さの違いでブレが出るようでは、逆に困りますが)
何と言っても、多数のバリエーションがある“ミリメートル系”のエンドミルが使えることが、最大のメリットかと。
さっそく、Autodesk社の「Fusion 360」を使って、評価用のオブジェクトをモデリングし、Snapmaker 2.0を使って、ミリングしてみました。
厚さ3mmのアクリル板を、削り出したところ。
一見、綺麗に仕上がっているように見えますが、一点、気になるところが。
評価用のモデルでは、アクリル板同士を組み合わせる際、位置決めが簡単にできるよう、深さ0.2mmの凹みを付けていたのですが、
評価用のモデルの左右(画像では、手前と奥)で、凹みの深さが、微妙に違うのです。
ノギスで計測してみたところ、その差、0.2mm。
僅かな違いではありますが、将来想定している“とあるモデル”を作製するにあたっては、大きな違いとなってきます。
使用したアクリル板(以前に使った“はざい”)は、「キャスト板」で、厚みの公差は、「±0.2mm」となっています。
ちょうど、公差分の違いではありますが、ノギスで計測してみたところ、左右とも、ちょうど3.0mmでした。
#公差±0.2mmと言えど、日本製のアクリル板なので、中華製の安っすぃ~粗悪品とは違い、高い精度を持って出荷されているようです。
ということは、これは、アクリル板の厚さの誤差ではなく、どうやら、「CNCワークボード」に傾きがあるようです。
Snapmaker 2.0をイニシャライズしてから、「CNCワークボード」の四隅の高さ(Z軸)を測定してみたところ、画像のような値となりました。
(上質紙1枚が動きにくくなる、0.1mmの高さで調整しています)
最大で、0.6mmもの差があります。
どおりで、評価用のモデルの左右に、違いが出る訳です。
単純に、垂直方向に切削するぐらいであれば、大した違いではありませんが、前述のように、浅い凹みを削り出すには、大きな違いとなって現れてしまいます。
ということで、本格的な作製に入る前に、「CNCワークボード」の水平を出すことにします。
「CNCワークボード」(CNC Carving Platform)は、Y軸を司る2本の「リニアモジュール」の上に取り付けられた、金属製の「プラットフォーム」の上に取り付けられています。
また、「CNCワークボード」は、「プラットフォーム」に、10本のボルト(M4)で固定されています。
よって、このボルトに、厚さ0.2mmや0.4mmなどの「シムワッシャー」(通常のモノより薄く、公差の少ないワッシャー)を挟み込めば、前後左右の傾きを補正することができます。
ただ、10本もボルトがあると、「あっちを入れたら、こっちがズレる」ということが発生し、とんでもなく時間が掛かることが想定されます。
#クルマをいじったことがあるヒトは、容易に推察できるかと思いますが。
具体的には、シムワッシャーを入れ替える毎にボルトを締め(緩め)、さらに、その度毎にZ軸を測定し直すという手順を、水平が出るまで繰り返すことになります。
3Dプリンティングの場合には、「キャリビュレーション」機能があり、4点を測定することで、リニアモジュールの作動時に、自動的にZ軸を補正してくれるのですが、CNCモードの場合には、この機能は使えません。
#使おうとしても、「No calibration is needed for CNC.」という、冷たいメッセージが。
何とか上手い方法はないものかと、考えあぐねていたところ・・・、
「ズレるなら 削ってしまえ ワークボード」
ということで、すごい方法を思い付いてしまいました。
「CNCワークボード」を「プラットフォーム」に固定したまま、ワークボードそのものを左右前後に動かして削ってしまえば、その状態での水平が出ることになります。
まさに、逆転の発想。0xF9F8
さっそく、Fusion 360で、レベリング用のオブジェクトをモデリングし、
Snapmaker 2.0で、ミリングしてみます。
φ4.0mmのフラットエンドミルを使っています。
ワークボードの素材は、MDFなので、簡単に切削できます。
粉のような、非常に細かな削りカスが出ますので、Dysonのハンディクリーナーを使って、適宜、削りカスを除去しながら進めます。
ミリングの後半です。
削る前と削った後の段差を比べてみると、測定どおり、ワークボードの左下(画像では右下)の方が、大きく削れているようです。
ミリングが完了しました。
せっかくの方眼が消えてしまいましたが、気にしません。0xF9C6
そもそも、これは切削して分かったことですが、位置決め用の方眼自体が、微妙にズレています。(リニアモジュールの作動方向に対し、平行(垂直)でない)
ワークボード自体の平滑性は高いようですが、表面をサーフェシングルーターで切削した後、ナット穴を切削し、そこに鬼目ナットを打ち込む、などの工程を経るうち、微妙に精度が失われてしまっているのかも知れません。
話が逸れますが、世の中には変わったヒトがいるもので、ヒトが作ったモノに、やたらとイチャモンを付け、マウントを取ろうとするヒトが、たまにいます。(そのくせ、自分では大したモノが作れないという)0xF9D1
量産品なので、必ず誤差は発生します。
誤差があることを知った上で、その誤差と上手く付き合っていく、自分の使いやすいように工夫していく。これが、マスプロダクトとのクレバーな向き合い方なのではないでしょうか。
四隅の高さ(Z軸)を、測定してみました。
厚さ3mmのアクリル板を挟んで測定したところ、四隅いずれも「3.0mm」となりました。
素晴らしい!0xF9CF
これで、「CNCワークボード」を「プラットフォーム」に組み付けた状態で、ワークボードの水平が出たことになります。
ただ、注意すべきは、今後、3Dプリンティングをするために「ヒートベッド」に交換した場合には、精度が保たれるかどうかは、不明という点です。
(また、プラットフォームを固定しているボルトを増し締めしただけでも、ズレるかも知れません)
そもそも、誤差が生じ得る部位は、「リニアモジュール」と金属製の「プラットフォーム」の間にもあり、これを補正しない限り、根本的な解決にはなりませんが、まぁ、「お手軽な方法で水平を出す」という点では、及第点だと思います。
ちなみに、A350用の「CNCワークボード」(MDF製)は、24.99ドル(約2,600円)で購入することができます。
また、切削により消えてしまった、位置決め用の方眼は、「レーザーモジュール」を使って刻印することもできますが、これはまた別の機会に。
と、いうことで、これにて、本格的なアクリル加工用の準備が整ったことになります。
〔補 記〕
いろいろ調べてみたところ、「CNCワークボード」のレベリング(水平出し)については、Forumでも話題になっていました。
また、Supportにもレベリングについての言及があり、「タッチスクリーンからキャリビュレーション機能が使えます」と記載されていますが、これは誤記だと思います。
(前述のとおり、現時点でのファームウェア(V1.11.4)では、CNCモードにおいては、キャリビュレーション機能は、使えません)
同項目には、「MDF製のワークボードを切削すれば、完全に水平にすることができます」とも書かれていたので、あながち、間違った方法ではなかったようです。0xF9C7
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