またも、海外から大きな荷物が届きました。
Snapmaker社の、「Snapmaker 2.0 A350」です。
Airbus社の旅客機みたいなネーミングですが、名前の由来は後ほど。
公式ストアで「2週間以内に出荷」となっていましたが、注文してからきっかり2週間で出荷、3日で東京まで届きました。
注文してからハッと気付いたのですが、いちおう、日本仕様で送ってくれたようです。
まぁ、日本仕様といっても、マニュアルやコントローラーのUIが日本語化されている訳ではありません。
ACアダプターも、マルチボルテージ(100~240V)対応だったので、違いといえば、電源コンセントの形状ぐらいかと。
開封。
一番上は、クイックスタートガイド。
精密機器だけあって、なかなか手の込んだ梱包がなされていました。
「Make Something Wonderful」というキャプションが随所に記され、ワクワクするような作りです。
二段目は、リニアモジュールが5本。
今回の機器選定のキモの一つです。(こちらも後述)
三段目は、3Dプリンティングモジュールやコントローラー、ACアダプターなど。
それぞれの箱は、組み立ててしまえば要らなくなりますが、小物を入れるのに便利なため、手頃なモノは、捨てないで取っておいた方が良いかと。
さっそく、組み立てに入ります。
まずは、公式サイトのチュートリアルを見て、全体の流れを掴みます。
組み立ては、特に難しいところはありません。
クイックスタートガイドは、当然ながら英語ですが、イラストが多用されており、プラモデルがふつーに組めるヒトであれば、困ることはないでしょう。
あえていうなら、ツールボックスの中に、ビット交換式のドライバーが入っていますが、ボルトをしっかり締めるため、別途、ヘキサゴンレンチがあった方が良いかと。
ベースプレートに、Y軸のリニアモジュール2本が付いたプラットフォームを、固定しているところ。
ここまで組み立てたのですが、いったん、手戻りしました。
どうも、凝り性なのか、ボルトの締め付け順序も、最終的な組み立て精度に影響があるように思え、ホイールのボルトを締め付けるのと同様、互い違いになるようにやり直しました。
ボルトの締め付けトルクも、ヘキサゴンレンチを使った手作業では、なかなか難しいところですが、無闇にきつく締め付けるのではなく、適度な固さになるよう留意しました。
Z軸のリニアモジュールを、固定しているところ。
この作業の前に、Z軸のホルダー(Lアングル)をベースプレートに固定するようになっていますが、こちらも、ボルトは完全に締めずに、X軸のリニアモジュールを2本のZ軸に固定し、全体が決まってから、締め付けると良いかと。
各部品は、かなりの精度で加工されているようですが、要所要所でのちょっとした配慮で、最終的な組み立て精度が上がる(のではないか)と思います。
#本当は、直角や平行が出ているか、しっかり調べたいところですが。
その他、気を付けるべきことといえば、リニアモジュールからCANのフラットケーブルが出ていますが、プラットフォームを持ち上げたり裏返したりする時に、ケーブルに無理な力が加わらないよう、注意することぐらいでしょうか。
と、いうことで、ベースとなる部分が完成。
途中、凝り性ゆえの手戻りもありましたが、ゆっくり作っても、2時間もあれば組み立てられると思います。
こちらは、今回、「Snapmaker 2.0」を選定した事由の一つです。
左から、「3Dプリンティングモジュール」、「CNCモジュール」、「レーザーモジュール」です。
「Snapmaker 2.0」は、3Dプリントに留まらず、モジュールを取り替えることにより、NC加工やレーザー加工もできる、“一台三役”の優れモノなのです。
ふつーは、3Dプリントから試しそうですが、ひねくれ者なので、「CNCモジュール」を取り付けました。
#この季節(冬期)、3Dプリントは、温度管理が難しそう(ヒートベッドとエンクロージャーを使わないと)なので。
こちらは、いままで大活躍してくれた、Proxxon(キソパワーツール)のフライス盤(No.27000)です。
ホビー用ですが、熟練してきた(?)ので、けっこうな精度で切削加工などができるようになりました。
んが、しかし、ここでCNC(コンピュータ数値制御)の投入です。
設置場所は、すでに退役したコンポーネントたちを収容している、AVラックの上としました。
まるであつらえたかのように、ぴったりなサイズでした。
また、さすがはオーディオ用のラックだけあり、かなり堅牢な造りで重量もあるため、リニアモジュールが稼働しても、びくともしません。
なお、プラットフォームのY軸方向の稼働領域を考慮し、設置方向を見直しました。
今後、3Dプリンティングのためにエンクロージャーを設置する際には、ベースボードの作製も含め、さらに見直したいと思います。
こちらは、設置場所の上方です。
都合の良いことに、設置場所の近くに、エアコン用のサービスホールがあります。
3Dプリンティングをする際、ABSなどの素材を使うと、かなりの臭気がするようです。
将来的にエンクロージャーを設置する際には、ここにPCファン付きのダクトを取り付け、強制排気させるなど、構想は広がります。
こちらは、「Snapmaker 2.0」を選定したもう一つの事由、「リニアモジュール」です。
ホビー用の3Dプリンターの各軸の駆動には、多くモデルで、「ベルトドライブ」が用いられています。
その名のとおり、ステッピングモーターの回転方向の動きを、ゴム製のベルトにより、前後(上下・左右)方向の動きに変えています。
機構が比較的簡単で、低コストであることから、低廉なモデルでは、ほぼこの「ベルトドライブ」になっています。
しかしながら、ベルトを高速に動作させた時に生じる“撓み”(たわみ)や、ベルトの経年変化による“伸び”などにより、ある一定以上の精度を出せない、という問題があります。
#一昔前のレコードプレーヤー(ベルトドライブ式)でも、ベルトがヘタってくると、微妙に音が変わってきましたが。
この“撓み”や“伸び”は、精密な動作を要求されるこの手の機器では、致命的な問題となります。
一方、Snapmakerは、初号機(Snapmaker Original)から、各軸の駆動には、「リニアモジュール」が用いられています。
ステッピングモーターを用いているという点では同一ですが、「リニアモジュール」の内部には、ネジ山を切ったシャフトが入っており、このシャフトを回転させることにより、可動部を前後に動かすような機構となっています。
急峻な動きは苦手ですが、ステッピングモーターの回転角により、可動部の位置が一義に定まるため、非常に高い精度を出すことができます。
#ちょうど、「ベルトドライブ式」と「ダイレクトドライブ式」の違いのようなものかと。
Snapmakerは、すべての軸が、この「リニアモジュール」で駆動されており、これが選定のポイントとなりました。
(画像は、Snapmakerから拝借)
なお、初号機(Snapmaker Original)の「リニアモジュール」は、外から内部のシャフトが見える形になっていますが、ここから切削した際の削りカスなどが入ってしまう、という問題点があったようです。
「Snapmaker 2.0」からは、この点が改良され、「リニアモジュール」のレール部分にカバーが取り付けられたことにより、削りカスなどが入らないようになっています。
こちらも、選定のポイントとなりました。
(画像は、Snapmakerから拝借)
紹介が遅れましたが、「Snapmaker 2.0」シリーズには、「A150」、「A250」、「A350」の、3つのモデルがあります。
その名のとおり、造形できるサイズを示しており、「A350」の場合は、
320mm(幅)×350mm(奥行き)×330mm(高さ)
のものを扱うことができます。(数値は、3Dプリンティングの場合)
“とある構想”の実現にあたり、どうしても、立方300mmを超える造形サイズが必要だったため、最も大きい「A350」を選択しました。
「A350」の価格は、公式ストアで1,799ドル、これに送料119.00ドルが加わり、合計1,918.00ドル。日本円で、204,075円でした。(1ドル106.4円換算)
これに、輸入関税・消費税7,700円が加わり、最終的に、211,775円で購入できました。
Snapmakerには、日本の代理店もあり、またAmazonやYodobashiでも購入できますが、こちらの価格は、274,780円(送料込)。
代理店ルートでは、マニュアルやコントローラーのUIが日本語化されているようですが、まぁ、6万円以上もお得に買えるのであれば、個人輸入しても良さそうです。
#万が一、製品に何かあった場合の対応は、直接本国とやり取りする必要がありますが、これまでにも、BMWやPorsche、Audiの純正部品を、ドイツから取り寄せていたので、特段、不安は感じませんでした。
(画像は、イメージです)
中華製の、安っすぃ~、バッタもん3Dプリンターなら、立方300mmのモデルでも、数万円で売られていますが、ロクな精度は出ないでしょう。
かといって、日本製の3Dプリンターでは、立法150mmのモデルでも、8~10万円程度はします。立法300mmのモデルでは、余裕で30万円オーバー。
1年以上前から、どのモデルにするか、悩んでいましたが、ここへ来て、一台三役の「Snapmaker 2.0」が発売となったことを知り、迷わずこれに決めてしまいました。
(画像は、Snapmakerから拝借)
なんでも、2019年の米国クラウドファンディングで、プロジェクト開始1分で目標額に達し、トータルで8億5,300万円もの資金を調達、技術部門での最速・最高記録を更新したとか。
それだけ、世界中のDIY好きには、魅力のある、待望のモデルだったのでしょう。
ホビー用の工作機械としては、かなりの投資となってしまいましたが、この「Snapmaker 2.0」を得たことで、SOARISTO工房の加工範囲も、そうとうな広がりが出るものと。
我ながら、今後の展開が、楽しみです。0xF9C6
(つづく)
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