前回の続きです。
オリジナルの「可変バルブ制御ユニット」ができたところで、いよいよ車両に取り付けます。
まずは、リヤ右側のパネルを取り外します。
詳しくは、こちらを参照ください。
Akrapovic純正の可変バルブ制御ユニット、「Akrapovic Sound Kit」は、Cピラー内部のフレームに取り付けられていました。
と、その前に。
配線に手を入れる前に、しっかりサービスマニュアルを読み込み、予習しておきます。
マフラーの可変バルブ(バタフライバルブ)を制御しているソレノイドバルブは、リヤ右側にあります。
サービスマニュアルでは、「エキゾースト・ドア・バルブ1」(Exhaust Door Valve 1)という名称になっています。
Porsche 911と同様、負圧(真空圧)を制御することにより、エキゾーストパイプの途中にあるバタフライバルブを、開閉しています。
以前から気になっていた、エンジン左右にある「三色団子」みたいなものは、「バキューム・リザーバー」(Vacuum Reservoir)であることが分かりました。
負圧を蓄えるとともに、その圧が一定になるよう整えるもの(サージタンク)で、電気で言うところのコンデンサみたいなものです。
「エキゾースト・ドア・バルブ1」のチェック手順を確認してみると、ソレノイドバルブの2つの端子間の抵抗値は、「22.0~30.0Ω」となっていました。
こちらは、リヤ右側にある、「エンジン・コントロール・モジュール」(Engine Control Module)の配線図。
「エキゾースト・ドア・バルブ1」には、信号1(灰/緑)と信号2(赤/緑)とが、接続されていることが分かります。
「エンジン・コンパートメント・ハーネス」です。
この図から、コネクタハウジングの部品コードを割り出します。
コネクタハウジング、および関連する部品を、ドイツ本国から調達します。
左側が、防水カプラのメス(「エキゾースト・ドア・バルブ1」側)で、右側が、防水カプラのオス(「エンジン・コントロール・モジュール」側)です。
あわせて、それぞれの防水カプラに対応する、コンタクトピン、ケーブルシール(ゴムブッシュ)を購入しました。
コネクタ関連の部品が揃ったところで、車両側に移ります。
リヤ右側の、「エキゾースト・ドア・バルブ1」です。
ソレノイドバルブ本体には、「PIERBURG」の文字があります。
(ソレノイドバルブの動作電流を測定中)ソレノイドバルブは、ドイツのPierbrug社のもの(品番:「7.22280.04」)ですが、動作時の電流を測ったところ、510mA程度ありました。
(電磁コイルによる誘導性があるため、動作開始時は、1A近い電流が流れることでしょう)
こちらは、Porsche 911の「PSE(Porsche Sport Exhaust System)」用に、可変バルブ制御回路を試作していた時のもの。
ソレノイドバルブは、本体色やコネクタ形状は異なるものの、同じサプライヤのものが使用されていました。
「エキゾースト・ドア・バルブ1」に繋がる配管の解析です。
「バキューム・リザーバー」から、負圧を引き込み、「三方分岐ピース」にて、エキゾーストパイプ左右のバタフライバルブに接続されています。
エンジンルーム内の所定の位置に、ソレノイドバルブを固定します。
もともと付いているM6のボルトで共締めです。
画像の上方向が、バキュームライン上流のバキュームタンクに、下方向が、エアクリーナーボックス右横のソレノイドバルブに、左上方向が、PSEのソレノイドバルブに、それぞれ接続されます。
これにより、標準のバキュームラインに三方分岐ピースを割り込ませ、PSEのソレノイドバルブに負圧を引くことができました。
こちらは、Porsche 911に、PSEを取り付けていた時のもの。
負圧制御の仕組みが分かっていれば、解析は比較的簡単です。
つづいて、「Akrapovic Sound Kit」に繋がる配線の解析です。
画像右下の「防水カプラ(メス)」が、「エンジン・コントロール・モジュール」からのもので、標準の状態では、「エキゾースト・ドア・バルブ1」に接続されています。
「Akrapovic Sound Kit」は、この「防水カプラ(メス)」と「エキゾースト・ドア・バルブ1」との間に配線を割り込ませ、Bluetoothリモコンからの指示に基づき、強制的に「エキゾースト・ドア・バルブ1」の開閉を行っています。
こちらは、「Akrapovic Sound Kit」のワイヤーハーネスです。
ふと思い立って、防水カブラのゴムブーツを脱がせてみたところ、「防水カプラ(オス)」の方に、抵抗がかましてあることが分かりました。
抵抗値を測ってみたところ、「約1kΩ」ありました。
これは、重要な発見でした。0xF9A0
すなわち、「エキゾースト・ドア・バルブ1」の配線に割り込んで、強制的にソレノイドバルブを制御するだけではなく、「エンジン・コントロール・モジュール」に向かっている配線にも、“必要な処理”を行わないと、異常を検知し、エンジンチェックランプが点いてしまうということです。
#まぁ、当たり前と言えば、当たり前ですが。
一方、評価時に用いた、SparkFun Electronicsのソレノイドバルブ(DC12V駆動)の抵抗値を測ってみたところ、「約36Ω」でした。
前述のとおり、サービスマニュアルには、抵抗値は「22.0~30.0Ω」となっていましたし、電磁コイルの抵抗値は、だいたい30Ω前後のようですので、疑似抵抗は、「30Ω」とすることにします。
抵抗値が分かったところで、RECAROシートを取り付けた時と同様、エンジンチェックランプ(ソレノイドバルブセンサー)のキャンセラーを自作します。
抵抗器は、タクマンの酸化金属被膜抵抗器(小型品)で、定格電力は3Wです。
秋葉原の千石電商で、30円/本でした。
抵抗値を「30Ω」にするためには、単純にその値の抵抗器を繋げればよいのですが、この抵抗器は、誤差±5%ですが、抵抗そのものの絶対値が小さいため、同じ「30Ω」でも、個体によってけっこう抵抗値にバラツキがあることが分かりました。
そこで、「56Ω」と「62Ω」の抵抗器を並列に接続し、合成抵抗値をほぼ「30Ω」としました。
2本並列にすることで、その組み合わせにより、誤差を互いに打ち消し合い、期待値に近付けることができます。また、定格電力を6Wに増強できるという、メリットもあります。
#電圧12Vで、抵抗値30Ωの時の消費電力は、4.8Wで、抵抗1本(3W)だけでは、オーバーロードとなります。
抵抗器を、住友電工の「熱収縮チューブ」で保護し、ケーブルに防水のためのゴムブッシュを通した上で、コンタクトピンを圧着します。
この時点で、テスターを使って、抵抗値が約30Ωであることを確認しておきます。
コンタクトピンを、コネクタハウジングに挿入し、完成です。
「エキゾースト・ドア・バルブ1」に、防水カプラを接続します。
「エンジン・コントロール・モジュール」から来ている防水カプラに、キャンセラー(疑似抵抗)を接続します。
エンジンに近いこともあり、配線は、「ULビニールチューブ」(耐熱105℃)を使って、保護しておきます。
場所(配線の本数)に応じて、φ5.3mmとφ3.3mmとを、使い分けます。
紫線と青線は、ソレノイドバルブの制御用のケーブルです。
赤線と白線は、以前に配線したセキュリティLED用のケーブルです。運転席足下の、ダッシュパネルトリムまで配線されていますが、いったんすべて引き抜いて、配線し直すことにしました。
テールランプユニットからは2本(赤・白)ですが、ソレノイドバルブ付近で2本(紫・青)が合流し、運転席足下へ向かいます。
あとは、リヤドライブレコーダーの取り付けや、リヤビューカメラの取り付けと同様、車室とエンジンルームとを隔てる、“隔壁”を通して、ケーブルを引き込みます。
蛇腹になっているゴムブーツの青○の部分に、カッターで切り込みを入れ、ケーブルを通します。
“隔壁”の部分の処理です。
リヤドライブレコーダー、セキュリティLED、リヤビューカメラのケーブル、そして今回の4本の配線をまとめたビニールチューブが通っています。
4種類のケーブルをまとめ、フリース粘着テープを巻き、純正のケーブルハーネスに沿わせ、固定していきます。
サイドシルの部分も、純正のケーブルハーネスに沿わせ、固定していきます。
Aピラーの根元まで引き回し、立ち上げます。
レーダー探知機、セキュリティLED、リヤドライブレコーダー、リヤビューカメラのケーブルとともに、終端します。
(つづく)
Post Comment