なにやら、やたら大きな荷物が届きました。
「RECARO」って、書いてあります。
何が入っているんでしょうかね。
#奥さんにバレないうちに、急いで家の中に入れないと。0xF9C7
さっそく開梱。
RECAROのSport Seatシリーズ、「Sportster CL210H」です。(定価:297,000円、購入価格:267,300円)
Sportsterは、昨年2019年にデザインが小変更され、センターにシルバーのラインが2本入ったことで、シャープな印象になってます。
変更前のモデルにするという手もありましたが、センターラインがボディーカラー(アイスシルバー)と同系色となるため、変更後の、こちらのモデルにしました。
「Sportster CL210H」のシートマテリアルは、外縁部が「レザー」、内縁部が「パンチングアルカンターラ」となっています。
外縁部が「レザー」、内縁部が「パンチングレザー」となっているモデル(Sportster LL210H)もありますが、着座時の滑りにくさを考えて、アルカンターラのモデルにしてみました。
#なによりも、アルカンターラの肌触りが好きなので。
ちなみに、変更前のモデルでは、サイサポート(シート座面の一番手前の部分)も、アルカンターラになっていたようです。(変更後は、画像のようにレザー)
RECARO純正の「ベースフレーム」です。
Audi R8(42系)用の設定がないのですが、Audi TT(8J系)用(2012.054.2)が流用できるようなので、こちらにしました。(定価:22,000円、購入価格:19,800円)
このRECARO純正ベースフレームを使うと、適合情報によると、Audi TTの場合は、シート位置がドア側に20mmほどオフセットされる(着座位置とステアリングホイールの中心位置とが、ズレる)ようです。
いくつかのRECARO専門店では、「当店オリジナルのシートレールで、シートオフセットを回避」とか書いてありますが、それぞれの店に聞いて回ったところ、“たいして回避されていない”(オフセットがゼロになる訳ではない)ことが分かりました。
たいがいのヒトは、「それでも、お金で解決」だと思いますが、職人の場合は、「20mmぐらいなら、なんとかなるだろう」という安直な考えで、Audi TT用を流用することにしました。
#はたして、吉と出るか、凶と出るか。0xF9C7
まずは、シート本体にベースフレームを固定します。
取付説明書に従って、M8のキャップボルトを、6mmのヘックスビットを使って、規定トルクで締め付けます。
「保安基準適合品」とありますが、強度認定された車種とは別の車種に取り付けているため、厳密に見られたら、車検はアウトですね。
スライド位置調整用のレバーは、取付位置が3段階に選べますが、目立たないよう、一番奥の位置にしました。
シート本体にベースフレームを固定したところで、つぎのプロセスに掛かります。
純正シートを取り外す前に、しっかりサービスマニュアルを読み込み、予習しておきます。
フロント左右の座席直下には、各種コネクタが集められた、「コネクター・ステーション」があります。
コネクタは、「10ピンコネクタ(黒)」、「6ピンコネクタ(緑)」、「10ピンコネクタ(赤)」、「3ピンコネクタ(黄)」の、4種類が入っています。
シートベルトのアンカーバックルは、ベースフレームに、ボルト1本で固定されています。
シートベルトの着用センサーの信号は、「コネクター・ステーション」まで行く途中に、「2ピンコネクタ(黒)」が入っています。
こちらは、フロント右側にある、「ライト・フロントシート・カップリング・ステーション」(TSVR)の配線図。
「10ピンコネクタ(赤)」に、電源(赤)とアース(茶)とが、接続されていることが分かります。電動パワーシートの電源です。
配線図の続き。
「3ピンコネクタ(黄)」に、信号1(黒)と信号2(青)、アース(茶)とが、接続されていることが分かります。サイドエアバッグの「イグナイター」の信号です。
この信号1と信号2とに、疑似抵抗(2.5Ω)をかますことにより、あたかもサイドエアバッグが接続されているものと、車両側のセンサーをだますことができます。
また、「10ピンコネクタ(黒)」に、信号1(茶/黒)と信号2(緑/黄)とが、接続されていることが分かります。シートベルトの「着用センサー」の信号です。
シートベルトのアンカーバックルに、アンカータングを差し込むと、信号1と信号2とが短絡され、シートベルトを着用したことが検知されます。
配線図の続き。
さらに、「6ピンコネクタ(緑)」には、シートヒーターの電源(黒/黄)とアース(茶)、温度センサーの信号1(黒/白)と信号2(茶/黒)とが、接続されていることが分かります。
「シート・フレーム・ワイヤリング・ハーネス」です。
この図から、コネクタハウジングの部品コードを割り出します。
こちらは、遠路はるばる、ドイツ本国から届いた皆さんです。
Audi純正のコネクタハウジングで、左から、「4F0 937 733 B」(赤)、「4F0 937 733」(黒)、「3B0 972 712」(黒)、「8J0 972 576」(黄)、です。
なぜに、わざわざAudi純正のコネクタハウジングを取り寄せたかというと・・・、
「Sportster CL210H」には、「パワーリクライナー」と「シートヒーター」が、装備されています。
これらは、けっこうな電流容量となるため、一般的なRECARO専門店では、バッ直(バッテリーから直接電源を取ること)で対応しています。
また、純正シートには、サイドエアバッグが装着されています。
このサイドエアバッグの機能をキャンセルするため、一般的なRECARO専門店では(しつこい?)、純正の配線に「キャンセラー」を、直接割り込ませるような方法を取っています。
純正の配線を“切った貼った”したり、新たな配線を引き回したりするのは、“気持ち悪い”ため、純正の配線に一切キズを付けず、車両側のワイヤーハーネスに、すべて「カプラーオン」する方法を取ることにします。
将来、Audi R8を手放すことになった時にも、「シートが交換された」という一切の痕跡を残さず、元に戻すことができます。
#とかいって、すでに痕跡だらけですけれども。0xF9C7
オリジナルのワイヤーハーネスを自作するにあたり、まずは材料を集めます。可能な限り、純正と同じクオリティーに仕上げることにします。
こちらは、大画面カーナビ(CN-F1X10BD)を取り付けた時にも使用した、住友電装の「自動車用薄肉低圧電線」です。
今回は、「AVS」よりもさらに絶縁体を薄くした、「AVSS」を使用します。配線図の指定に基づき、2.0sq, 1.25sq, 0.5sqを使い分けます。
こちらは、RECAROシート付属の、「バッ直」用の電源ケーブル(上段)と、サイドエアバッグの「キャンセラー」(下段)です。
#キャンセラーといっても、単に抵抗が入っているだけですが。
サイドエアバッグセンサーのキャンセラーを、自作します。
コネクタハウジング(3ピンコネクタ(黄))は、「8J0 972 576」で、コンタクトピンは、「000 979 035 E」です。
疑似抵抗(2.5Ω)は、RECAROシート付属のものは使わず、秋葉原で調達しました。
タクマンの酸化金属被膜抵抗器(小型品)で、5.1Ωのものを、2本並列に接続します。定格電力は2Wですが、大きさは1Wのものと同じぐらい、小型のものです。
千石電商で、20円/本でした。
#アフターとして売られているものが、どれだけボッタクリなのかが、分かると思います。0xF9D1
抵抗値を2.5Ωにするため、2.0Ωと0.5Ωとを、直列に接続する方法もありますが、誤差が±5%と、けっこう大きいため、5.1Ωを2本並列に接続することで、合成抵抗値を約2.5Ωにすることができます。
2本並列にすることで、その組み合わせにより、誤差を互いに打ち消し合い、期待値に近付けることができます。また、定格電力を4Wに増強できるという、メリットもあります。
ケーブルは、配線図の指定と同じ、黒(信号1)と青(信号2)とを、使っています。
抵抗器を、住友電工の「熱収縮チューブ」で保護し、両端にコンタクトピンを圧着します。
この時点で、テスターを使って、抵抗値が約2.5Ωであることを確認しておきます。
コンタクトピンを、コネクタハウジングに挿入し、完成です。
余談ですが、サイドエアバッグのイグナイター用のコネクタ(8J0 972 576)は、少し特殊な形状をしています。
コネクタの中に小さな接点(バネになっている)があり、コネクタが抜かれている時は、接点1と接点2とが、常に短絡するようになっています。
これは、作業中など、コネクタを抜いた状態において、静電気などの影響で、不用意にサイドエアバッグが暴発することを、防ぐ目的のようです。
電源ケーブルです。
上段は、電動パワーシートの車両側のコネクタハウジング(4F0 937 733 B)で、下段は、RECAROシート側のコネクタハウジング(T型2極)です。
コンタクトピンを圧着し、コネクタハウジングに挿入した後、tesaの「フリース粘着テープ」で保護しておきます。
シートベルトセンサーのケーブルです。
上段は、シートベルトセンサーの車両側のコネクタハウジング(4F0 937 733)で、下段は、シート側のコネクタハウジング(3B0 972 712)です。
同じく、コンタクトピンを圧着し、コネクタハウジングに挿入した後、フリース粘着テープで保護しておきます。
2本のワイヤーハーネスをまとめ、φ13mmのゲルコートチューブで保護しておきます。
これにて、オリジナルのワイヤーハーネスによる、RECAROシートの取り付け準備完了です。
(つづく)
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