前回の続きです。
今回の「セキュリティLED制御回路」では、常時電源(BAT), アクセサリー電源(ACC)の、2つの電源線が必要となります。
常時電源は、その名のとおり、バッテリーから常時電源が供給されているもので、アクセサリー電源は、イグニッションキーをキーシリンダーに挿入した時に電源が供給されるものです。
#国産車や多くの輸入車の場合には、キーをシリンダーに挿入すると、ステアリングロックが解除され、「ACC」の位置まで回すと、アクセサリー電源が供給されるようになっているのが一般的です。
#一方、Porscheの場合には、キーをシリンダーに挿入すると、ステアリングロックが解除されるとともに、すぐにアクセサリー電源が供給されるようになっています。
(もしかすると、Porsche伝統の「ル・マン式スタート」を素早く行うため、あえて一段抜いた機構にしているのかも知れません)
また、以前の「PSE制御回路」では、イグニッション電源(IGN)が必要でした。
イグニッション電源は、エンジンが掛かっている状態(キーをシリンダーに挿入し、「ON」の位置まで回した状態)の時に電源が供給されるものです。
これら、3種類の電源線が必要となり、それぞれをヒューズボックスから取り出すことにしますが、この際、きちんと系統立てて、電源線を整理することにしました。
#わざわざそこまでする必要もないのですが、まぁ、技術屋としての“気持ちの問題”ということで。0xF9C5
ヒューズボックスから電源を取り出す方法として、エーモンさんから「平型ヒューズ電源」という製品が発売されています。
しかし、Porscheで使われている「平型ヒューズ」においては、許容電流量が10A, 15A, 20Aのラインナップしかなく、今回、アクセサリー電源の取り出しを予定している7.5Aのものはありません。
(最近のクルマで広く使われている「ミニ平型ヒューズ」においては、7.5A, 10A, 15A, 20A, 30Aの、幅広いラインナップがあるのですが)
ラインナップのない電流量に対しては、「フリータイプヒューズ電源」という製品があり、これを使えば、7.5Aにも対応させることができます。
しかし、この製品は、ヒューズ本体を収容する「ヒューズホルダ」が別パーツとなっており、これが嵩張って、Porscheの場合には、ヒューズボックスの蓋を閉めることができません。
そこで、「ないのなら 作ってしまえ ヒューズ電源」(字余り)ということで、電流量に合わせた特製の「平型ヒューズ電源」を作ることにしました。
#別メーカーの「平型便利ヒューズ」という製品を使えば、簡単に解決できますが、まぁ、「何事もお金で解決」というのも、いかがなものかと思いまして。0xF9D1
(大した金額ではありませんが)
まずは、“取り出される側”の「平型ヒューズ」です。(画像手前)
これに加工を施します。
フライス盤で、平型ヒューズのプラスチック部分の一部を切削します。
φ5mmのエンドミルを使って、片側の端子のギリギリ上を狙います。
切削加工した平型ヒューズです。(画像左側は、エーモンさんのもの)
上手く片側の端子を露出させることができました。
なお、平型ヒューズの上面には、許容電流量の刻印が入っています。左右どちらの端子を切削するかについては、Porscheのヒューズボックスに収納した際、他のヒューズと刻印の方向が一致するよう選定しています。
(エーモンさんの製品では、天地逆さまになってしまいます)
電源線を平型ヒューズの片側の端子にハンダ付けした後、絶縁のためコーキングしておきます。
コーキング剤は、信越シリコーンさんの「一液型RTVゴム」(脱アセトンタイプ)の「KE-348-T」(購入価格:2,520円)を使います。一般電気用で、耐熱・耐寒性、耐候性(対紫外線性)、絶縁性があるものです。
なお、ホームセンターなどで安価に手に入るコーキング剤(「脱オキシムタイプ」のものなど)は、間違っても使ってはいけません。耐熱・耐候性が低いどころか、硬化する際に腐食性のガスを発し、金属部分が冒されてしまうことがあります。
#自動車用に、ケチって安いもんを使うと、ろくなことにならないっちゅーことですな。0xF9D1
テルモさんの「シリンジ」(注射管)を使って、コーキング剤を充填します。
充填にあたっては、余計なところにコーキング剤が付かないよう、マスキングしておきます。また、気泡が入らないよう、適度な速さで注入していきます。
つづいて、“取り出す側”の「ヒューズ」と、ヒューズを収容する「ヒューズホルダ」です。
エーモンさんの製品(平型ヒューズ電源)では、「管ヒューズ」(φ6.5mm×30mm)が使われていますが、今回は、少しでも嵩を小さくするため、「ミニ管ヒューズ」(φ5.2mm×20mm)を使います。
ホーザンさんの圧着工具、「P-707」(画像手前)です。
ヒューズとのコンタクトを“かしめる”(圧着する)際に使います。
一般的なコネクタに広く使われている「オープンバレル型コンタクト」を圧着するためのものですが、カーオーディオなどに使われている「ギボシ端子」も圧着することができます。
この手の工具としては、少し値が張りますが(定価:9,655円、購入価格:6,000円ぐらい)、なによりも、適正な圧力で確実に圧着ができるため、非常に重宝しています。手入れさえきちんとしていれば、一生モノの工具として使えます。
#コンタクトの圧着は、2,000円前後の安っすぃ~工具でも、できなくはありませんが、仕上がりのレベルがまったく違います。0xF9D1
ヒューズホルダなどを接続し、完成したところです。
電源線が黄色のものが「常時電源(BAT)」用、オレンジ色のものが「イグニッション電源(IGN)」用、赤色のものが「アクセサリー電源(ACC)」用となります。
取り出し側は、複数のパーツに電源供給することを想定し、二股のギボシ端子(メス)にしています。
市販品には無いラインナップで、市販品に勝るとも劣らないクオリティを誇る(?)、と思われます。0xF9C6
ヒューズボックスから、3種類の電源線を取り出したところです。
「電源取り出しヒューズ」の作成に合わせて、「PSE制御回路」用のハーネスも作り替えました。
なお、配線コードは、自動車用の耐熱性のあるもの(古河電工製)で、使用部位に合わせて、0.75sq(電源用), 0.5sq(電源用), 0.3sq(信号用)のものを使い分けています。
(つづく)
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