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数値の裏を読む ~流出でも純増のカラクリ~

 さて、一連のゴタゴタで、通話料金(ではなく、正しくは端末料金の割賦の頭金)が「ゼロ円」になっただけでなく、信頼もすっかり「ゼロ」になってしまった某社ですが、

 2006年10月末時点の携帯電話契約数が発表されました。

10月の携帯電話契約数、auが35万2600件増、ソフトバンクは2万3800件増
(2006年11月8日:ITpro Network)

 TCA(電気通信事業者協会)が公開した10月末時点の携帯電話契約数に依ると、

   ドコモ: 5214万3700 (4万800の純増)
   KDDI: 2660万3100 (20万600の純増)
   ソフトバンク: 1533万800 (2万3800の純増)

となりました。(括弧内は、9月末時点からの増減)

MNP第1ラウンドはKDDIの一人勝ち,NTTドコモが純増数を大きく減らす
(2006年11月8日:ITpro Network)

 また、MNP(番号ポータビリティ)による加入者流動は、

   ドコモ: 約7万の純減
   KDDI: 10万2000の純増
   ソフトバンク: 2万3900の純増 (転入3万1100、転出5万5000)

となりました。(いずれも、各社の公表値)

 結果だけ見ると、ドコモがMNPによる流出により単月の純増数を大きく減らしたのに対し、KDDIが大きく躍進したことになります。
(逆に、ドコモはMNPで約7万も純減しているのに、加入者トータルで約4.8万の純増としたところは、ある意味すごいことですが)

 一方、ソフトバンクは、MNP開始前の下馬評では“一人負けになる”とされていましたが、約2.4万の純増ということで、“予想外”に健闘していることになります。

 一般ピープルの理解は、もちろん、ここまでで良いと思います。

 んが、果たして本当にそうなのでしょうか?

 「2万3800の純増」の根拠を整理してみると、

   MNPによる増減: 転入3万1100、転出5万5000 (差し引き2万3900の減)
   MNP以外の増減: 新規契約19万2100、解約14万4400 (差し引き4万7700の増)

であり、MNPによる2万3900の減と、MNP以外による(純然たる営業活動による)4万7700の増で、差し引き2万3800の純増と言っています。

 さてここで、前述のTCAの公開値を、もう少し詳しく見てみましょう。

 携帯電話の全契約数のうち、「携帯IP接続サービス」の契約数は、つぎのとおり。

   ドコモ: 4719万9900 (1万3400の純増)
   KDDI: 2174万2900 (23万4400の純増)
   ソフトバンク: 1288万4700 (1万8000の純減

 各社とも、プラスの数値がキラキラ輝いて(輝かせて)いる中で、一ヵ所だけ、何故だかマイナスになっているところがあります。

 この「携帯IP接続サービス」とは、ドコモでいえば「iモード」、KDDIでいえば「EZweb」などの、ネット接続ができるサービスのことを指しています。

 先ほど、MNPを除く純然たる営業活動では、「4万7700の純増」になっていましたが、携帯IP接続サービスでは、「1万8000の純減」。

 はて? きょうび、ネット接続のできない端末など、買うヒトがいるのでしょうか?

 その答は、「プリペイド式携帯電話」の加入数にあります。

 TCAの公開値では、「ソフトバンクは数値を公表しておりません。」とされていますが、実は値が公開されています。

   ドコモ:  4万6500
   KDDI:  105万3700 (auとツーカーの合計値) 
   ソフトバンク: 156万5700

 まず驚くべきは、その絶対数の違いです。

 「プリペイド式携帯電話」は、ご存知のとおり、児童買春や荒手の詐欺商法、外国人犯罪の温床とされ、堅気の商売をしているドコモは、一連の社会的問題が顕在化した時点で、契約時の身元確認を厳格化するなどして、販売を減速させました。

 一方、他の2社は、いずれも100万契約オーバーと、ドコモと比べて2ケタ以上も異なる契約数を、いまだに保持しているのです。

 しかし、こんなことで驚いていてはいけません。

 プリペイド式携帯電話サービスには、「有効期限」があり、その有効期限を過ぎると、当然ながら使用できなくなります。あわせて、契約者数のカウントからは、自動的に外されます。

 んが、ソフトバンクは、プリペイド式携帯電話サービスの有効期限を、これまで「180日」であったところを、倍の「360日」に延長しているのです。しかも9月1日から。

ボーダフォンがプリペイド通話料値上げ,番号有効期限は2倍に延長
(2006年7月28日:ITpro Network)

 名称はボーダフォンとなっていますが、時期的には、すでにソフトバンクによる買収が完了し、着々と今回の「予想外割」の構想を練り、“堅牢なシステム”の構築を進めていたころだと思われます。

 この9月1日というタイミングが、9月末の中間決算を睨んだものなのか、はたまた10月24日のMNP開始を睨んだものなのか、定かではありません。

 定かではありませんが、いずれにしても、これまでの約款の180日規定で、使っても使わなくても10月末に自動解約になるはずだった契約が、360日規定に変更したことにより、何もしなくても、労せずして、来年春まで延長(延命)されたことになります。

 すなわち、今回の「流出でも純増」の裏には、少なからず、プリペイド式携帯電話の自動解約先延ばしによる“オフセット”が掛かっているはずなのです。

 おそるべし、ソフトバンク。(そこまでするかっ!)

 この「延命策」を考えついたヒトは、まさに天才です。ここまで悪魔的な、狡猾な数値操作術を思いつくヒトは、ドコモにはいないでしょう。(ある意味、真面目なので)

 しかも、思いつくだけではなく、適切な時期に、前もって実行しているのです。

 気になるのは、その“オフセットの数”です。プリペイド式携帯電話の契約数が「156万5700」ですから、仮にその1%が非有効契約だったとしても、優に「純増2万3800」の意味すら大きく揺るがす数値になるはずです。

(以下、しつこく編集中)

〔つづき〕

 予想的中?

「志は決していかがわしくない」孫社長が携帯事業で力説・ソフトバンク決算会見
(2006年11月8日:IT-PLUS)

#そもそも、トップがこういうことを言わざるを得ないこと自体、如何なものかと思いますが。0xF9D1

 「11月1~7日の期間で、5,000~6,000契約分が有効期限延長となった」と自ら認めていますが、単純に計算すると、月間22,500契約となります。

 これを差し引くと、やはり、「純増2万3800」は、有って無いような数値だったのでしょうか。

 某社の“弱っちいシステム”が停止せず、何事もなく契約変更手続き(解約手続き?)が進んでいた時の数値が、見てみたかったです。残念。

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Comment(1)

初めまして!いつも拝見させてもらってます。

ところでこの記事、痛烈ですね!
自分はその某キャリアのユーザーですが、飛び入り参加のシャチョーさんにはもっと×2しっかりしてもらいたいと思ってます。
(まず料金プランが分かりにくい!)

ただ、工房長様、少し辛口過ぎるのではないでしょうか?
そんなに弄って何が面白いんですか?(汗
あまりホームページのイメージとそぐわない気がします。

なんだかBlogを開設する前の工房長様とは違う人みたいな感じがです。ちょっと失望しました。

posted by  shunta at 02:16:33 2006/11/12 | reply

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